特許登録してから読んでください
ピピ――!
笛の音とともに特許取り締まり特許局員がやってきた。
「私は特許取り締まり特許局員です。
今、あなたから2件の特許侵害を特許確認しました」
「特許多くないですか!?」
「うるさいです。めんどうなことは嫌いなので手短にいきます。
"映画"と"最高"の言葉は特許が取られています。
無償で使用することはできません、特許」
「え……それじゃどうすれば」
「特許使用料を払って使うか、
無料で使える別の言葉を使ってください、特許」
それだけ言って局員は立ち去った。
もちろん、俺からしっかり使用料をむしり取って。
「それで、さっきの話は?」
「えと……
こないだの"ハンムラフッヒ"なんだけど"バルサ"だったんだ」
無償で使える言葉に差し替えて説明すると、
友人はにこりと笑顔で答えた。
「全然わからない」
・
・
・
「はぁ……特許ってめんどくさいなぁ」
いまや作品だけでなくありとあらゆるものに権利が存在する。
勝手に利用すればすぐに……
ピピーー!
「私は特許取り締まり特許局員です。
今、あなたから1件の特許侵害を特許確認しました」
どこからともなく局員が飛んでくる。
「ど、どこに侵害があったんです!? わからないですよ!」
「あ、今追加で1件特許侵害を特許確認。
"めんどくさい"と"わからない"は特許あります、特許。
無断使用は特許侵害で罰金を払ってもらいます、特許」
「うぅ……あなたも前に言ってませんでした?」
「"めんどう"は大丈夫なんです、特許」
「じゃあ俺も今度からそっち使います」
「"めんどう"は僕が特許を取っているので、
使用するときは僕にちゃんと使用料を払ってください、特許」
「めんどくさいな!!」
「はい罰金」
局員はどこにでも出てくるし、誰からも徴収する。
初めて赤ちゃんが話す言葉が「ママ」にならないよう
親は最初から「マンマスプラーダ」という呼び名に変えるほど。
「こんな世界間違っている!
権利を振りかざして自由を侵害してなんになるんだ!!」
ついに我慢できなくなった俺は別の惑星を探した。
地球と同じ環境の惑星を見つけるのに10数年かかった。
多額の予算をつぎ込んで、やっと未開の惑星へと到着した。
「この惑星は特許や権利がない楽園にしよう!」
ピピー―!
聞き覚えのある笛の音が聞こえた。
空からシャトルが飛んできて、局員が空から降ってくる。
「私は特許取り締まり特許局員です。
今、あなたから1件の特許侵害を特許確認しました」
「ふふ、バカめ。この星はもう地球じゃないんだ。
なにをどうしゃべったって特許侵害になるもんか」
「いえ、この惑星がすでに特許登録されているんです、特許」
「えええええ!?」
「あなたが見つけた時点でこちらで特許申請しました。
そのほか、銀河系にあるすべての星は特許登録済みです。
使用には使用料を払ってもらいます、特許」
「ちくしょーー!!」
俺はあきらめて地球へと強制送還された。
地球に戻るころには
街はすっかり委縮して静かになってしまっていた。
「このままじゃ、みんな言葉を自由に使えなくなって
コミュニケーションすらまともに取れなくなるぞ……」
特許特許とうるさい奴らを黙らせる方法は……。
「そうだ!!」
俺は新たに1件の特許を登録した。
それから数日後。
「こないだの映画なんだけど、最高だったんだ」
ピピ――!
笛の音とともに局員がすっ飛んできた。
「私はパヌフッタモモヒヒマスラマサージウウス
ロイワルバスイオカタャスヴァザルームン
コライラガリエイコファンバーイオパワクァ取り締まり
パヌフッタモモヒヒマスラマサージウウス
ロイワルバスイオカタャスヴァザルームン
コライラガリエイコファンバーイオパワクァ局員です。
今、あなたから2件の特きっ……
パヌフッタモモヒヒマスラマサージウウス
ロイワルバスイオカタャスヴァザルームン
コライラガリエイコファンバーイオパワクァ侵害を……ああめんどくさい!!」
「はい侵害」
特許という言葉を
パヌフッタモモヒヒマスラマサージウウス
ロイワルバスイオカタャスヴァザルームン
コライラガリエイコファンバーイオパワクァ
に特許登録してから、局員は二度と来なくなった。
作品名:特許登録してから読んでください 作家名:かなりえずき