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エースを狙え

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新人合同自主トレ


 1月11日

 10:00


今日は俺を含めて去年のドラフトで入団した新人選手全員が一斉に各球団で合同自主トレを開始される日だ。一体どんな練習をするかは球団によって違うらしい。俺達は取り合えずジャージを着てストレッチをしながら監督達が来るのを広島サンドの一軍ホーム球場である広島市民球場内で待っていると数分遅れでぞろぞろと砂羽監督を始めコーチなどが5人来た。


「各自、ストレッチはきっちり入念にしろよ。開始早々怪我されちゃあ叶わんからな」

「はい!」

「いい返事だ。さっそく始めるぞ!まずは球場内5周スタート」

「はい」


広島市民球場は狭く5周はゆっくり走ってもあっという間に終わった。
一息入れるとすぐに次の練習に行くのはプロもアマもあまり変わらないと思った。
次はダッシュ5本×3をする。
この辺はさすがは高校生の体力で乗り切った。
その次は、チューブを使ったトレーニング。
まずは背中のトレーニングは、長座の状態でゴムチューブを足(土踏まず付近)に引っ掛け、ゆっくりと状態を起こし、腕の力でゴムチューブを引っ張るのではなく、背中側の筋肉を意識しながら行う。
その次は肩のチューブトレーニングをする。これは肩のローテーターカフを鍛えるトレーニング方法であり、チューブを安定した場所に引っ掛け固定する。位置は直立した状態で肘の高さに固定したまま、チューブを引っ張る。
次は体幹を鍛える。
両手でチューブを持ち、肩幅よりも少し広めに足を開き、腰を軽く落として力強く立つ。体幹を動かさないようにしっかりと力を入れたら、両腕を前に突き出す。終始体幹が捻れないようにする。
そしてチューブトレーニング最後はお尻を鍛えること。
チューブを膝よりも数センチ上にセットして、、、
腰を落とし、スクワットをし、横にスライドする。3歩横スライドしたら、進行方向の足の膝を10回外に開く。また3歩の横スライドで元の位置に戻ったら、また進行方向の足の膝を10回開く。
チューブトレーニングがすべて終わったのが13:00だった。
その後、1時間の休憩があり食事が届いた。高級焼肉弁当+お茶付きだった。
これがまた美味しすぎてペロリと食べれた。
ご飯を食べた後は新人同士で色々話した。
俺はかなりの人見知りをする方だったので自分から話す事はなかったのだが、立華が話し掛けて来た。


「よう、佐熊」

「…立華、だっけ…」

「おう。キャッチボール組もうぜ」

「…いいけど…俺なんかでいいの…?」

「当然だろ。ドラ1なんだから。それに背番号14を受け継いだ奴だしな、佐熊は」

「…それは…只の過大評価だよ…」

「その評価は佐熊じゃなくて佐熊以外の人が佐熊を見て判断するものだろ?自己評価とは別だから」

「…そうなのかなぁ…」

「そうだって」

「何か、立華は自信満々だな…」

「そうでなきゃ高卒からプロに入ろうなんて思わないからな」

「甲子園、どうだった…?」

「ん、甲子園?楽しかったぜ?3回戦で負けたけどな」

「…そっか…なんで俺、ドラ1だったんだろ…甲子園に行けなかったのに…」

「甲子園だけが評価基準じゃないって事なんじゃないのか?ドラフトの時、砂羽監督もそう言ってたじゃん」

「…そうだけど…あ、一つ気になってたんだけどさ…立華は知ってたのか?」

「何が?」

「広島の元背番号14を着けていた選手だよ…」

「その口振りからすると調べたんだ?」

「調べたというか、何というか…ちょっと気になっただけだよ…」

「そっか。知ってたよ。俺が生まれるより前の選手で実際は生で見た事がないんだけどな。ウチの親が大ファンだった選手でさ。その選手今はもう居ないんだけど、ビデオに試合とか録画してあってそれを子供の頃見せられたんだ。衝撃だったな、子供ながらに。圧倒的と思った。それぐらいに才能が桁外れに違うと実感させられた…俺が広島にドラ2で入団出来た時、ウチの親はそりゃ喜んだし、俺自身も嬉しかったよ。後は俺がその背番号背負えれば尚良しだったんだが、世の中そんな甘くないよな…」

「……今からでも監督に言って交換しても別にいいんだけど…俺としては…」

「どうして?」

「正直、俺は背負えない…今の話を聞いて改めてそう思った……」

「そっか…でも俺はやっぱり遠慮しておくよ」

「何で…」

「何となく、かな?」

「…意味分からん…」

「だろうな…」


そして1時間の休憩時間が終わった。
作品名:エースを狙え 作家名:本宮麗果