エースを狙え
別れ
佐熊昇、18歳。
中央高校野球部エース。
その世代ナンバーワン投手、そう言われていたのに夏の甲子園の予選決勝戦で負け、出られなかった。
「何が世代ナンバーワンだか…」
世の中には俺より凄い奴らなんていっぱいいるではないか…今年のドラフトの目玉は間違いなく優勝投手の三浦結城だろう。その他は高校ナンバーワンスラッガーである里見太輔だ。
この二人が俺より評価が低いなんてことありえない。
「…はあ…」
今俺はプロか大学か進路を迷っている。
そもそも甲子園にいけなかったらプロは諦めて大学に通うという親と約束していた。
だが俺を今まで育て上げてくれた母が癌になり、病院に入り浸りになったため学費がかかる大学は諦めた。
「俺、大学いくの辞めたから」
「何を…?」
「どうせ学費払えないし、俺野球しかやってこなかったからさ、勉強も出来ないし」
「これから、どうするの…?」
「社会人にいくか迷ってる」
「…プロにいかないの…?」
「わからない…」
そして病室から出ようと扉を開けようとした瞬間、母が言った。
「昇…後悔しては、ダメよ……」