憶測のサンタクロース
12月23日よりサンタクロースが行方不明になりました。
12月23日の朝に家を出たサンタさんですが、
その後連絡が途絶え消息が不明。
事件前日の足取りを取材陣が追いました』
テレビの取材クルーがサンタの家の前にやってくる。
「これがサンタの家なんですね。
閑静な住宅街にひっそりと建っています。
まるで温厚なサンタさんの性格を表しているようです」
家の前には黒い大きな車が止まっているのを見つけると、
リポーターはさっそく食いついた。
「これがサンタさんの車でしょうか?
大きな車できっとクリスマス用のプレゼントを購入し
家に持ち帰るためのものでしょうね。
サンタさんの努力家な姿勢がうかがえます」
『現場の○○さん。
サンタクロースの近所の評判はどうだったんですか?』
マイクが近隣住民へと向けられる。
「感じのいい人で、
よく小さい子を家に招いては紙芝居をしていました」
「あんな人が誘拐されるなんて……つらいです。
どうしてこの世界はいい人ばかり不幸に遭うんですか」
「最近、連続誘拐事件が多発していますし
きっとその犯人がサンタクロースを誘拐したんでしょう。
そう思うと、本当に悔しいです」
「サンタさんは、近所でも評判が良かったそうです。
きっと優しくて思いやりにあふれた人だったんでしょう。
誘拐犯への憤りは止みません」
『○○さん、家の中は入れますか?』
「入れます。
誘拐されたサンタさんの人物像を掘り下げていきます」
家には整理された子供向け絵本や、
子供向けのアニメやおもちゃがきれいに置いてあった。
「サンタさんは、やはり優しい人柄だったんでしょうね。
子供たちと触れ合う機会が多かったので
子供向けの玩具を取りそろえていたみたいです」
『そうですね、いい人に間違いありません』
「あ、ここにパソコンもあります。
きっとこれで子供たちを笑顔にする方法を探していたんでしょう」
「テレビもありますね。
優しいサンタさんですから、
これで暖かい番組を見ていたんでしょう」
『現場の○○さん!』
「あ、はいなんでしょう?」
『今、緊急速報が入りました!
サンタクロース誘拐犯がつかまりました!
今すぐ現場に向かってください!!』
「はい!」
取材クルーはそう遠くない場所へと急行する。
現場にはすでにほかの取材陣がごった返していた。
「すごい人だかりです!
あっ! 今、家の中からサンタクロースが出てきました!!
その後ろにいるのは……誘拐犯でしょうか!?」
やつれたサンタクロースの後ろには、
続いて、誘拐犯が伏し目がちに出てきた。
そして、サンタと誘拐犯の両方の手首に
詰めたい手錠がつけられていた。
『次のニュースです。
先月から多発していた女児誘拐事件の容疑者として
サンタクロースが逮捕されました。
先日のサンタクロース誘拐事件は、
その被害者の父親によるもので犯行原因は復讐だったようです』
映像はサンタクロースの家に向かった現場に切り替わる。
「はい、こちら現場の○○です!
連続誘拐犯サンタクロースの家は閑静な住宅街です。
静かなだけに薄汚い妄想を膨らませていたんでしょう!」
マイクが近隣住民に向けられる。
「感じはよかったけど……なんか危ない雰囲気はありました」
「ああいう人がこういう事件を起こすんですよね」
「たしかに、心の奥に闇を感じていました」
「サンタの人物像はやはり誘拐犯らしい感じですね。
パソコンで子供の画像を検索しては
家に子供を招いて舌なめずりしていたんでしょう、許せません」
『ありがとうございました。
やはりサンタクロースはとんでもない奴ですね。
それでは次のニュースです』
作品名:憶測のサンタクロース 作家名:かなりえずき