小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

クリぼっち対策ロボット

INDEX|1ページ/1ページ|

 
今日はクリスマスイブ。
朝から晩までクリスマス一色に染まっている。

「お前、なんで彼女作らないの? 寂しい男だなぁ」
「もしかして彼女いないの?」
「え? 逆になんで彼女できないの?」
「まー俺は彼女とクリスマスを過ごすけどなぁー」

「……うるさいなぁ!!」

男友達からは余裕と哀れみに満ちた言葉をかけられる。

なにがクリスマスだ。
誰がどう過ごそうと勝手じゃないか。

今日は誰にどんな話題を振っても
「え、お前クリぼっち?」とすぐにこの話題にされる。

「くそっ、俺のこと何も知らないくせに!!」

カップルがうらやましいわけじゃない。
それでも、うっとうしいのでロボットを購入することにした。

「ワタシは、疑似彼女用愛玩ロボット。
 ご購入ありがとうございます、マイマスター」

「おお、すごいな。見た目は完全に人間だ」

彼女役を担当するロボット。
見た目も動作もロボットらしさを残していないので
カップルであふれる場所に連れ出してもわかりっこないだろう。

「よし、これなら小馬鹿にされずに済むぞ」

さっそくロボットを連れて街に出る。
前まではカップルたちが憐みの視線を投げかけるところだが、
今はまるで風景の一部にでもなったように見向きもしない。

すると、向こうから男がひとり歩いてい来た。

カップルであふれる道なだけに、
それはかえって悪目立ちしていたので、すぐに気が付いた。

「おい、山田じゃないか」

俺は思わず声をかけた。

「ああ……なんだよ……」

「こんなところでどうしたんだよ?
 クリスマスは彼女と一緒に過ごすって言っていたじゃないか」

「お前、俺をバカにしてるのか!!」

「え!? いや、違うって!
 沈んだ顔してるから友達として放っておけなくて……」

「あーあーそうだよ! そうだよなぁ!!
 クリスマスイブになって彼女の逃げられた男なんて
 酒の肴に最高だよなぁ!! バカにしたいよなぁ!!」

山田は俺を突き飛ばして走り去ってしまった。

「マイマスター、ワタシは感情を理解できません。
 マイマスターに落ち度はなかったように思えます。
 どうして怒ったのですか?」

「それは……」

俺が彼女を持っていると見えたからだろう。

俺にその気がなくても「彼女いる」というだけで
山田は自分自身が格下だと劣等感を感じてしまったんだ。

どうしてすぐに「これはロボットだよ」と言えなかったのか。

「マイマスター」

「……なんだ?」

「マイマスターはどうしてワタシを買ったんですか?」

ああ、そうか。
俺は気付かないうちに山田と同じ劣等感を感じていたんだ。
本来、そんな劣等感なんて感じるわけないのに。

「世間体を気にしていたんだ……俺は」

「セケンテイ?」

「周りに遅れたくない、自分も同じ地位にいたい。
 そんな安い動機で君を買っていたんだ。
 自分の本当の気持ちすらも隠して……」

小馬鹿にされて、哀れまれても
「俺は俺だ」といえる勇気もなかった。
そうして孤立するのがただただ怖かった……それだけだった。

「やっぱり、恋人ロボットは必要ない。
 君はもう元の場所に戻っていいよ」

「マイマスター、よろしいのですか?」

「ああ。俺は自分を強く持つことを知ったから。
 みんなが俺を否定しても、自分の気持ちは曲げないよ」

「マイマスター登録を消去しました」

恋人ロボットは静かに去っていった。
そして、俺は山田の家に行った。

「どうしたんだよ、急に来やがって。
 彼女とのクリスマスデートでも自慢話しに来たのか」

「いいや、あれはロボットなんだ。
 馬鹿にされるのが怖くて、変な目で見られるのが嫌だったんだ。
 そんな逃げの気持ちで恋人を作っていた」

「それじゃお前も……」

「ああ、クリぼっちさ」

俺は山田に笑顔を向けた。
山田は目にうっすら涙がにじんでいた。

「強いんだな、お前。
 それを認められて、ここまで話に来るなんて」

「ああ、もう俺は自分の気持ちに嘘はつかないことにした。
 それがたとえどう思われても世間体なんて気にするものか」

「……ん?」

「クリスマスは好きな人と一緒にいたいって思うよな」

山田は俺を家に上げたことを後悔した。
きっと俺の目が男友達を見る目じゃなくなったからだろう。