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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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キャベツを買いに出かけて

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12月19日
私はアヒルの餌になるキャベツを近くのスーパーまで買いに行くことになった。いつもは妻が他の食料品と一緒に買ってきてくれるが、今日は娘の拾ってきた猫の避妊手術に娘と一緒に動物病院に出かけていた。
外は晴れてはいるが風が強い。スーパーまでは歩いて5分くらいなので、ジョギングシューズを履いて少し散歩をしながら行こうと思った。アスファルトの足への感触が足裏マッサージの様に心地よい。しかし路面を歩くのは久しぶりなためか、真直ぐに歩いているのに左右にずれる。車道と歩道の仕切り線でそのことが分かった。私はなぜか悔しかった。歳だから、運動不足とか言われるのが分かっていたからかもしれない。
 見知らぬ家だがその住人だろうか私に会釈をしてくれた。私はあわてて
「こんにちは」
と言った。こんな素晴らしい挨拶も歩いているからこそだと嬉しい気持ちになった。少し足をのばし、春にはきれいなしだれ桜の咲く道に向かった。その道は散歩道に成っていて、何人か歩いていた。しばらく歩くと、ビニール袋を手に持った3人の私よりかなり年配のご婦人に出会った。そして私の歩いているほうに近づいてきたので、私は
「こんにちは」
と挨拶をした。ご婦人は挨拶を返しながら、その中の1人の方が、私の目の前のごみを拾った。私は
「すみません」
と、思わず言っていた。でもその言葉はなぜか場違いな気もしたので
「今度散歩のときはビニール袋を持ってきましょう」
と言った。
「ありがとうございます。タバコの吸い殻が多いですよ」
たったそれだけの会話ではあったが、何かほっとした気持ちになれた。
 時期外れのコスモスの花も道端に咲いていた。可憐であり、時期外れだからこその美しさを感じた。私は車で来なくてよかったと思いながら、スーパーに向かった。