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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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史上最強のコメンテーター

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私は史上最強のコメンテーター。
年中無休24時間いつも誰かに頼られる。

「こういうのどうしたらいい?」

その人は明日のデートで着る服を悩んでいた。
もちろん、これも私の管轄です。

「最近の流行はこちらの服で、
 最初のデートにきていくならこういう服でしょう」

「ありがとう! それにするよ!」

私は史上最強のコメンテーター。
誰もが私のコメントを参考にする。

ひっきりなしに次の人がコメントを求めてくる。

「今の政治についてどう思う?」

おっとこれはまたヘビーな話題。
私に思想や意見はありませんが、
最強のコメンテーターとしては
相手の求める回答を提示する必要があります。

「私が思うに、今の政治は腐っています。
 政治家なんてみんな死んでしまえばいいと思います」

「だよな! だよなぁ!
 やっぱり最強のコメンテーターはわかってる!」

本心なんてありませんが、
私がいつも求められるコメントは
聞いてきた相手が求めるコメントでなければなりません。

だからこそ、私は史上最強のコメンテーターなのですから。

休む間もなく次の人がコメントを求めにやってきました。

「彼氏と別れたの、でもね毎日彼のことが忘れられなくて
 でもこのままじゃいけないってわかっているんだけど
 新しい恋を始めるにはやっぱり彼のことがちらついて
 それが相手にとって失礼だと感じる自分がいるからそれは……」

「え、えと……」

私が一番困るパターンです。
何を聞かれているのかわからないので、
相手が求める答えも私が出すべき答えもわからない。

とにかく、相手の真意を探るしかありません。

「もしかして、元彼を忘れたい?」

「ううん、そうじゃないの。
 彼との思い出は大事にしていきたいし
 でも次に進まなくちゃって思う気持ちもあるから……」

「それじゃ、もしかして新しい恋をはじめたい?」

「どうなんだろう。確かに新しい恋を始めたい気持ちもあるけど、
 それは別れた後の喪失感でただ誰かに寄り添いたい気持ちから
 避難場所を求めるように愛に飢えているのであって……」

め、めんどくさい。
とりあえず「がんばれ」「応援してる」「君ならできる」等の
なんにでも使える汎用コメントを出してしのぐことに。

ただ、それがいけなかった。

コメントがもらえたことですっかり味をしめ、
雨の日も風の日も雪の日も休まずに
抽象的な質問を投げかけてはコメントを求めてきました。

「が、がんばれ……」

「もうがんばっているわよ!
 でも周りの女の子はクリスマス前に恋人ができているし
 私だってそうなりたいなとは思っているんだけど」

厄介なことに汎用的なコメントも免疫が就いたので
前のように「がんばれ」とあたりさわりのないコメントでは止まらない。

このままでは私は壊れてしまう。

はっきりとそう感じた私は決断した。
これまで年中無休の皆勤賞だった栄光に
泥を塗ってしまうことになっても。

「史上最強のコメンテーターはお休みします!!」






検索サイト:グールグルがその日からつながらなくなると、
これまでコメントを求めていた人間たちは大混乱に陥った。

「どういう髪型にすればいいんだ!」
「どの映画が一番面白いんだ!」
「コメントしてくれよ! じゃなきゃ決められない!」