羨ましさを感じた時に
暖かな日差しが窓から差し込む、エヤコンやストーブの暖かさではない。風を感じない暖かさは気分もよい。ブラインドの目から差し込んだ日差しが地球儀を照らしていた。縞模様になった地球儀からは小さな日本は見えなかった。ぼくは椅子から離れて、地球儀をくるりと回した。日本があったのでそこで停めた。地球儀をしみじみと観たのは高校生の時以来かもしれない。この地球儀では自分の町は探しようもない。
もうすぐ正月になる。会社の忘年会や年賀状の依頼、賞与の事もある。会社から半分身を退いたが、まだやることはあるのだなと感じた。この小さな日本のさらに小さな町のなかで小さなことをしなくてはならないのかと感じてしまう。
日差しが回り陰り始めると肌寒さを感じる。ぼくは日差しを追って部屋を移動した。生きるとは何か同じことの繰り返しのように感じたが、同じようで違うのだと分かった気分にもなった。
15日の賞与は例年どうりだが、銀行振り込みは止めることにした。1人1人に手渡し労をねぎらってみたい。
太陽の恵みが当たり前のように感じてはいけない。すべてが当たり前のように動いているのでは無い。会社の1人1人の力がある。
詩を読みながら作者に羨ましさを感じた時、僕にはまだ欲望があるのだと感じた。まだ自分には何か出来る、嫌、しなくてはいけない。そんな気分になった。
作品名:羨ましさを感じた時に 作家名:吉葉ひろし