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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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読んだ気持ちを教えてください!

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この世界に自分が不必要だとわかるまで
かなりの時間をかけてしまった。

明日俺が死んでも、誰も困らないし気にしない。

親から愛されて生まれてきたというのに、
どんどんペットショップの成犬のように価値が失われていく。

きっと年を取ればもう粗大ごみなんだろう。

「……俺の人生、いったいなんだったんだろう」

そんなことを考えていたら悲しくなったので、
自分の生きた証を残したいと思うようになった。

数日後、約束した時間に記者はやってきた。

「週刊ダレモミテナイの記者です。
 今日はインタビューよろしくお願いします」

「はい、お願いします」

「んで、あなたにとって人生とはなんですか?」

記者には記事にしなくてもいいので、と
俺がお金を払ってインタビューしてもらった。

どんな形でも、誰でもいいから
自分のこれまでの人生の片りんを知ってほしかった。

「――以上でインタビューは終わりです」

「ありがとうござました」

インタビューはやってみて正解だった。
なんだか自分が有名人になったようで悪い気はしなかったし、
なにより自分のことを話せたことが嬉しかった。


それからしばらくすると、
俺の自宅には記者が押し寄せるようになった。

「週刊ダレモミテナイの売り上げを4倍にした
 あなたのインタビュー記事についてコメントを!」

「倒産寸前の出版社を救ったことについては!?」

「今のお気持ちをどうぞ!!」


「ええ!? う、うれしい、です……」

記者はいっせいにフラッシュをたいて、
俺の言葉を一斉にメモした。

後で気づいたことだが、
俺のインタビュー記事は掲載されたらしく
それが大人気となったので俺も時の人となった。

街を出ればすぐにマイクを向けられる。

「今日はどこへ行くんですか?」
「ちょっとショッピングに」

「何を買うんですか?」
「ははは、雑貨ですかね」

「休日はいつもショッピングに?」
「まあ、そうですね。好きなもので」

これまで見向きもしなかった俺の人間性が
やっとスポットライトの下に出たのが嬉しい。

有名人は変装したりするが、
こんなに気持ちのいいことからどうして逃げるのか。
まったくわからない。

いい気分だった俺を現実に引き戻したのは
たった1本の電話だった。


『大変! お母さんが……お母さんが……!!』






母は死んだ。
あまりに急な出来事で理解が追い付かなかった。

「……急な事故だったの」

霊安室では家族がうつむいている。
すると、遠くからどたどたと騒がしい足音が聞こえた。

ドアが開けられて、記者たちが目をらんらんと輝かせてやってきた。

「お気の毒ですね! お母様亡くなられたんですね!
 今の気持ちを聞かせてください!」

「お母様はどんな人だったんですか!?」

「死因は? 死に顔は? 年齢は? 年収は?
 体型は? 家族関係は? 離婚歴は? 年収は?」


「やめてください!
 インタビューを家族には向けないでください!」

「しかし、誰もが興味あると思いますよ。
 今やあなたは現代の売れっ子ですから」

記者たちは俺の一言一言を聞き漏らすまいと
ボイスレコーダーで俺の顔をぐるりと囲んでいる。

前まではあんなに自分を知ってほしいと思っていたのに。

こうなったら失礼なことを言って、
インタビューできないようにするしか帰ってもらう方法はない。

「母親の死を聞いたときどう思いました?」

「帰れ!! 帰らないとお前ら全員ぶっ殺してやる!
 お前らの家族も同じ目に合わせてやるからな!」

これでどうだ。
これならさすがに記事としては使えなく……。

記者は目をさらに輝かせて前のめりになった。

「それはどういう意味ですか?」
「殺人予告と受け取っていいんですか?」
「母親の死がよほど心から余裕を奪ったんですね!?」

「え、いや……あの……」


「「「答えてください! あなたにはその義務がある!」」」

逆効果だった。
俺の過激な発言はさらに話題性を高めるだけで、
記者の数は日増しに増えていった。

もう家の外にも中にも記者だらけになってしまった。

何か行動を起こすだけで記者はインタビューを始める。

「トイレでは何をする予定ですか?」
「ドアを開けたときの感想を一言で!」
「眠りについたとき、どう思いました?」
「ごはんを口に運んだ時の気持ちは?」

いったいどうすればいいんだ。
何を言ってもそれが火種になってインタビューが増えてしまう。
普通の日常を送るなんてもう……。

「どうして答えないんですか!」
「なにか隠しているんですね!」
「なにを隠しているんですか教えて下さい!」

俺ははっきりと答えた。


「……お答えしましょう」


記者のごくりと生唾を飲む音が聞こえた。


「実は俺はパンヌホビットラ惑星から来た宇宙人。
 この星にあるソアランモッソ鉱石で
 宇宙船の修理にきていたんです! これが真実!」

「「「な、なんだってー!!」」」

記者たちは慌ててメモを走らせて、
急いで自分たちの会社に連絡へと向かった。

翌日の報道は俺のことだけでもちきりになった。


『衝撃!! あの人は実は宇宙人だった!!』

 ・
 ・
 ・

それから数日後。

「……あれから、記者の人たち来なくなったね」

「誰も俺の言葉を疑わずに報道したからな。
 彼らは質問の答えはいつも正しい人にしか寄り付かない。
 いちいち情報の真偽なんて確かめたくないものな」

つけっぱなしのテレビには、
また新しく出てきた時の人にインタビューがなされていた。


『今の気持ちを答えてください!』