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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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366日目のあの日へ

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「乾杯」

「かんぱーい」

今日は彼女との付き合って半年の記念日。

「A子が彼女になってくれて本当に幸せだよ。
 最初は絶対に断られると思っていたんだけど」

「私、なにも試さないで結論を出すのは嫌だから」

「ありがとう。A子の優しさと愛に、かんぱい」

その日の食事は最高に楽しかった。

※ ※ ※

1年は366日あることを知らない人が多い。

366日目にはその年の1日だけを、
もう一度最初からやり直すことができる。

きたる366日目に備えて、
俺はどの日をやり直すか必死に選定していた。

「うーーん……やっぱり今年は
 5月の試験をやり直そうか、いや7月の大失敗をナシにするか」

こういう時に活躍するのが日記。
毎日いやな出来事を忘れずに書くことで、
366日目に備えてやり直す日を決める指標になる。

なにせ人間はすぐに忘れてしまうから。
忘れてしまった失敗の日で人生が左右されることも知らずに。

「ダメだ! 決められない!
 それにまだ12月前半なわけだし
 このあとさらにやり直したいほど悪いできごとがあるかもしれない!」

366日目の候補はしぼりつつも保留することに。
けれど、候補はどんどん増えるばかりだった。


12月10日
上司と大喧嘩した。
会社にいずらくなって退職願を出す。

12月24日
車を盗まれてしまう。

12月30日
雪道を自転車で通って転倒。病院に担ぎ込まれる。


12月31日
366日目の候補がまるできまらない。


「うああああ! やばいやばいやばい!
 ついに明日だっていうのに候補が決まらない!!」

不幸の奴も師走だと聞いて焦ったのか、
下半期に抑えていた分の不幸をぶっこんできやがった。

これじゃあやり直したい日が多すぎる!

「どうすればいいんだ!
 どの日をやり直せば一番今後幸せになれるんだ!
 ダメだぁぁぁ! もう何も決められない!!」

無常にも時間はどんどん進んでいく。

それなのに日記に書かれている不幸はどれも最悪。
最悪すぎて頭一つ抜けた不幸は存在しない。


そして、366日目がきた。






「乾杯」

「かんぱーい」

今日は彼女との付き合って3ヶ月の記念日。

「B子が彼女になってくれて本当に幸せだよ。
 最初は絶対に断られると思っていたんだけど」

「ううん、私も前からあなたのことが好きだったから」

「ありがとう。君の愛にかんぱい」

その日の食事は楽しかった。

「やっぱり、やり直すのなら
 失敗を修正するよりも幸せな日を再体験したくってね」

「366日目にこの日を選んでくれたのね! 嬉しい!」

ちょっぴり太めなB子は大いに喜んでいた。


※ ※ ※


366日目にA子は半年前を迷わずに選んでやり直した。
ムードのあるお店で、男は花束を差し出した。

「A子! 俺と付き合ってください!!」

「絶対にムリ!! だってお前、セリフが痛いんだもん!
 半年過ごして心から今日を後悔していたもん!」

「ええ!? まだ付き合ってもいないのに!」