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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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永久の縛りプレイ楽園

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人生は制約が多いほどおもしろい。

これが俺の人生哲学だ。

「ようし、今日は白いところしか歩けない。
 人ともしゃべらないように縛り生活しろ」

神の命令により、俺は今日一日だけ声を失い
道の白い部分しか歩けない体になった。

はたしてそんな状態で日常が過ごせるのか。
そんな不安を感じつつも普段と違う日常は進んでいく。

横断歩道をぴょんぴょん子供のように渡ると、
周りからは不思議そうな顔を向けられる。

でも、説明することはできない。
それが今日の制約なのだから。

「ふふ、明日はどんな縛り生活なのかな」

制約が多いほど人生は楽しい。
神が毎日すべての人間に縛り生活をすることで
日々に変化を生み出している。

なんてありがたいことか。

翌日、神はまた新しい縛りを出した。

「昨日の縛りに加えて、
 今日は時間に「0」が含まれていないと食事取るのはダメ」

なんと昨日よりさらに制約が加えられた、

12:00には食事をとれても、
12:11~12:19までは食事をとれない。

地味に苦しい縛り生活だが、とても楽しそうだ。
不便さは感じつつも時間を意識する生活が楽しかった。


翌日、神はさらに新しい縛りを出した。

「昨日の縛りに加えて、
 今日は歩くことを禁止する」

今度はどんな短い距離でもダッシュするしかなくなった。
ルールに従わなければ神の鉄槌は免れないものの、
この不便でぎりぎりな日々がスリリング。

「ああ、明日はどんな制約をしてくれるんだろう」

慣れてしまえばどんな縛りだってこなすことはできる。
毎日新鮮な感動を味わうためには、新しい縛りが必要だ。


翌日、神は新しい縛りを出した。

「もう縛り生活はしてはいけません」

これまでの制約すべてが解除されて自由になった。
好きな時間に食事をとれるし、好きなように歩ける。

普通なら喜ぶべき変化ではあるが、感じたのはストレスだった。

「な、なんだこの手ぬるい生活は……!!」

これまで制約を課して、
その中でどう動くかを工夫していたのが楽しかったのに。

納得ができないので神に直談判しに向かった。

「どうして縛りをなくしたんですか!
 これじゃあ毎日がぬるま湯に浸かっているようでつまらないです!」

「そうはいっても、君以外のほとんどが
 制約を課すことには反対しているんだよ」

「だったら、俺だけに制約を課してくれよ!」

「すべての人間に平等にできないと神じゃなくなるし……」

いくら神に説得を試みてもダメだった。
神といえど、多勢の反対には逆らえない。

「こうなったら自分で制約を作るしかないか」

神によって強制的に制約を課さなくても、
自分で勝手にルールを作って守ればいいじゃないか。

そう思って活動すること数日、すぐに諦めがついた。

「ダメだ! やっぱり自分本位になってしまうぅぅ!」

自分で自分に制約を課そうとすると、
無意識に"楽な方"での縛りになってしまう。

神がやっていた一方的な制約にはならない。

「もうダメだ……。
 俺はこの刺激も工夫もないこの世界で
 一生だらだら飼い殺しのように生きていくしかないんだ……」

もう取り戻せないあの充実感。
俺は絶望のあまり地面に手をついた。

すると、そこに人が通りかかった。

「あの、どうしたんですか?」

 ・
 ・
 ・

それから数年後。

その人と結婚してから俺の生活は劇的に変わった。
毎日、新鮮な幸せがどんどん舞い込んでくる。

「あなた、家にいる間はずっと家事やるのよ!」
「子供を寝かしつけるまでは外出禁止よ!」
「ご近所付き合いもあるんだから感じよくしてよ!」

どんどん自分への制約が増えていく。
これこそ俺の求めていた変化の絶えない日常。

「ああ、まかせろ。全部守るよ」

俺は笑顔で答えた。