クリスマス
チャ子ちゃんが、
「サンタクロースにプレゼント貰ったよ」
とお菓子の袋を見せてくれた。
透明な袋の中には、チョコレートやクッキーが見えた。チョコレートなどは年に1,2回食べられれば良い方だった。
「サンタさんは本当にいるんだね」
ぼくはお菓子が食べたくて真剣にチャ子ちゃんに訪ねた。
「靴下を枕元に置くのよ。その中にサンタさんがプレゼントしてくれるの」
「靴下でいいんだね」
ぼくは1年過ぎて、12月24日の夜、枕元に靴下を置いた。
なかなか眠れない。
「母ちゃん、うちには煙突が無いけれどサンタクロースは来るよね」
「サンタクロースは日本には来ないよ」
「そんなことないよ、チャ子ちゃんのところは去年来たんだから」
「サンタさんは外国人だけど最近は日本にも来るようになったんだね」
ぼくは、母ちゃんの言うこととチャ子ちゃんの言うことを半分づつ信じた。
翌朝はいつもより早く目が覚めた。枕元の靴下を手で触ってみると、かすかに膨らんでいた。手を入れてみると、ちり紙につつまれて、大きな飴玉が2つ入っていた。
ぼくは母ちゃんに
「サンタさんが本当に来たよ」
と嬉しくて嬉しくて大きな声で言った。
「よかったね」
と母ちゃんはなぜか横を向きながら言った。
ぼくはチャ子ちゃんにサンタさんが飴玉をくれたと言った。
「サンタさんはね、いないのよ」
とチャ子ちゃんは言った。
ぼくはチャ子ちゃんちの代わりにサンタさんが、ぼくの家に来てくれたのだと思い、チャ子ちゃんに飴玉を1つ渡した。チャ子ちゃんはぼくより2歳年上だったから、背も首一つ大きかった。
「ありがとう」
チャ子ちゃんはぼくの頭を撫でてくれた。
チャ子ちゃんの話が本当だったと気が付いたのは、5年生に成ってからだった。
母ちゃんが
「クリスマスは何が欲しいんだい」
と僕に言ったのだ。
「去年はごめんね。お金も無かったし急に言われたからね」
ぼくは大人になっていく自分が少し嫌いになった時だった