小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

仏画を飾る

INDEX|1ページ/1ページ|

 
池に落ちた落ち葉を網ですくいながら、浮いている金魚の死骸を手でつかむと、手はしびれるほどの冷たさを感じた。金魚の朱色はとても鮮やかで、まだ死んで間もないのだろうと感じた。このまま誰も気づかなければ、鯉の餌になるかもしれない。それはそれでいいのかも知れない。でも、手で掬いあげたからには葬ってあげなければと思い、庭に小さな穴を掘った。思えば我が家の庭には、カナリヤ、犬、熱帯魚などが埋葬されている。生きていた時は、私や家族を楽しませてくれた。時が経ってしまうと、そのことは忘れ、今いる動物たちに愛情が注がれてしまう。
 ふと自分自身を想い、生きてきた過去と、これからの未来を考えると、未来の少ないことにいまさらのように気付く。少年のころの夢は次々と失い、堅実な夢が、家庭を持ち、子供を育て、それこそ平凡な日々の中で喜怒哀楽を経験した。それは、決められた池の中で生きた金魚たちと同じなのかもしれないと感じた。私がホームセンターで見つけ、私に買われた金魚は私の池に放された。同じように、会社に入るのもきっかけであったかもしれない。あみだくじの様に、最後の結果はたどり着くまで分からない。だからこそ、だからこそ今をしっかり生きなければならないのかも知れない。
 私は仏画をはじめて家に飾った。油絵やリトグラフなどは何枚か飾ってあるが、仏画は初めてである。飾ってみると、宗教には無関心な自分なのだが、京都の寺に行った時のように、自然と手を合わせたくなる。新しい自分を見つけたような気持ちになる。不思議な気持ちなのだ。たぶん、金魚の死骸を私が見つけた時と同じ気持ちなのかも知れない。心の奥に沈んでいた気持ちが、仏画を観たことで、浮きあがってきたのかも知れない。
作品名:仏画を飾る 作家名:吉葉ひろし