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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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人間の頭頂部には1本のアンテナが立っている。

そんな当たり前のことだったが、
2本立っている人間を見つけて驚きのあまり
人見知りの俺が思わず声をかけてしまった。

「あの、すみません。
 どうしてあなたのアンテナは2本なんですか?

 普通、人間のアンテナは自分の知りたい世界のため
 アンテナは1本のはずだと思うんです」


「あっははは、君は知らないのかい?
 人間のアンテナは増設することができるんだよ」

男は自分の2本目のアンテナを指さした。

「これはね、流行アンテナ。
 ありとあらゆる流行をキャッチして教えてくれる。
 きみも増設すれば、おしゃれ上級者間違えなしさ」

「それは……すごい」

正直、流行なんてどうでもよかったが
アンテナの増設ができると聞いてこれはぜひ試してみたい。

男に聞いた店の場所に向かうと、
話通り「アンテナショップ」が見つかった。

「いらっしゃい」

店には白髪のおじいさんと、犬が1匹。

「アンテナの増設がしたいんですが」

「では、どのアンテナにしますか?」

店にはさまざまなアンテナが陳列されていたが、
はじめての増設なので入れてみて不要なアンテナは避けたい。

「それじゃあこれを」

「はいよ」

店主はアンテナをお金を受け取ると、
乱暴にアンテナを俺の頭頂部にぶっ刺した。

その瞬間、すべての人間の本音が頭に流れ込んできた。

"本音アンテナを買うとは酔狂な客だ"
「ありがとうございました、またどうぞ」

「すげぇ! 本当に本音が聞こえる!」

本音アンテナの効果は確かにあった。
知りたくもない本音が聞こえるデメリットはあれど、
それ以上に相手の本音を自動的に受信できるなんて最高だ。



それから数日、本音アンテナを使いつぶしていたが
ついつい店に並んでいたほかのアンテナも気になった。

「……また増設してみようかな」


"動物アンテナ"
動物の声がわかるようになる。

"地殻変動アンテナ"
地面のプレートの状況がわかる。

"愚痴アンテナ"
受信範囲内の愚痴をキャッチする。


「どれもいまいちだなぁ」

最初に一番よさそうな「本音アンテナ」を買ったために、
店に残っているのはどれも微妙なものばかり。

かといって、完全にアンテナ買うつもりだったのもあり
妥協して動物アンテナをレジへと持って行った。

「これお願いします」

「まいど」
"またこの客か。まさか感づいたのか"

店主はアンテナを俺に突き立てた。

「またどうぞ」
"また来ませんように。
 神のささやきアンテナはワシのものじゃ"

「なんだって?」

思わず足を止めた。
神のささやきアンテナ?

そんなものはこの店に陳列されていない。

「な、なにがかな?」
"コイツ、まさか神のささやきアンテナの存在を!?
 増設した人間すべて成功者へ導く伝説の……"

「それください!
 その、神のささやきアンテナを!!」

「知らん! そんなものは知らん!」
"ネットオークションで高額落札するんじゃ!
 こんなしょぼい客に買われてたまるか!"

それから店主との押し問答が続けられたが、
ついに神のささやきアンテナの場所を割ることはなかった。

本音も含めて。


「……必ず成功者になれるアンテナかぁ」

有名な科学者も、IT企業の社長も、成功者はみんな
頭に自分の世界のアンテナとは別にもう1本生えている。
あれが、神のアンテナだとすれば……。

「俺も成功者になりてぇぇぇ!」

けれど店主は神のアンテナを店のどこかに隠している。
強引に押し入ったとしても、探しているうちに捕まるだろうし。

なんとか手に入れる方法はないか……。


"チュンチュン。今日は雨が降るチュン"


ふいに頭に鳥の声が聞こえてきた。
たまたま動物アンテナの範囲に鳥が飛んできていた。

「待てよ……たしかあの店には犬が一匹いたはず!」

この動物アンテナを試す時が来た!
俺は店にふたたび舞い戻った。


"はあ、ご主人。今日もかまってくれないワン"

「聞こえる……聞こえるぞ!」

店の外から、店の中にいる犬の声が入ってくる。


"いつも地下ばかりに行って散歩も連れて行ってくれないワン"

「地下……か」

おそらく神のアンテナは地下に隠してあるんだな。
でも、店にはそれらしい入口なんてなかった。

いったいどこから出入りしているんだ。

"あ、ご主人! 戻ってきたワン!
 でも、どうして毎回ドアを5回も開閉するワン?"





その夜、俺はふたたび店にやってきた。
店主が眠っていることを、本音アンテナで確認済みだ。

「ドアを5回も開閉……」

それがなんのおまじないかわからないが、
俺も試しに店のドアを5回開け閉めを繰り返した。


ゴガンッ。


外れるような音とともに、地下への階段が現れた。
こんなところに隠していたなんて。

たしかに、厳重な鍵やパスワードで守れば
"ここに保管してます"と伝えるようなものだからな。

階段を下りた先には、ガラスケースに収められた1本のアンテナが。

それは成功者たちの頭から生えていたものと同じ
まごうことなき神のアンテナだった。

「これで、俺を成功に導いてくれるんだ……!」

アンテナを自分の頭に差し込んだ。
すると、神の声が聞こえてきた。




"君が今やっている小説づくりは才能がないからやめなさい"
"今の会社は成長しないからやめなさい"
"次にできる彼女は成功しないのでやめなさい"
"趣味の山登りも上達しないのでやめなさい"
"アイドルの追っかけするのも成功しないのでやめなさい"
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"以上、1,250,548件の忠告を守ってやめていれば
 残された選択肢に失敗はありません。

 つまり、成功します。よかったですね"