フレネミー探偵は間違えない!
ここで行われるのはある種の魔女裁判だ」
フレネミー探偵が口を開くと、
周りの友達たちはひそひそと話し始める。
「今から、この中にいるフレネミーを探す」
フレネミー。
フレンド(友達)でありエネミー(敵)である。
笑顔で親しげに話すその裏で、
友達の悪口やひどいことをする人間。
早い段階で見つけておかなければ、
のちのちに取り返しのつかないことになる。
「みんな、携帯を出してくれ」
探偵の指示に全員が携帯電話を出した。
受け取った探偵は各々のデータを確認する。
「現代のコミュニケーションのほとんどは文字だ。
実際に話すことは少ないから、
どこかに悪口をかけばすぐに見つけることができる」
データ削除されたものも含めて履歴を洗い出す。
けれど、誰一人として探偵の悪口を書いている人はいなかった。
「……なるほどな。
どうやらフレネミーは相当に慎重らしい。
足がつく場所に証拠は残さない、というわけか」
しかし、こんな程度で「はいOK」となれば探偵ではない。
ここから一歩踏み込んで調査するからこそなのだ。
今度は全員の連絡先をたぐって、
友達の友達にかたっぱしから連絡をとっていく。
「もしもし? 探偵ってムカつくよね」
『え? なに?』
ブチッ。ツーツー……。
「もしもし、探偵ってウザくない?」
『あ、そう?』
ブチッ。ツーツー……。
――問題なし。
潜んでいるフレネミーが誰かに陰口を漏らしていたとすれば、
俺の悪口を言った瞬間、すぐに合わせてくるだろう。
けれど、誰一人として悪口に乗る人はいなかった。
「もういいだろ。ここにフレネミーなんていない。
というか、そもそも……」
「いやまだだ!!」
あきれ気味の友達たちの言葉を探偵がさえぎった。
探偵は恐ろしいことに気が付いたのだ。
この異常な状況に。
「……これはおかしい。
誰も悪口を言わないどころか、褒めることもしていない」
それこそが異常。
好意的、否定的であれなんらかの反応はあるはずだ。
だが、連絡先の誰に聞いても知らない風だった。
それはつまり……。
「……わかったぞ。この恐るべきフレネミーに」
探偵は全員を鋭くにらみつけた。
「フレネミーはお前たち全員だったんだ!
足がつかないように
グループ全員で監視して陰口言っていたんだな!」
ひとりではつい証拠を残してしまうところを、
全員が組織的に動けば個人に漏れることもない。
完璧にして究極に訓練されたフレネミー。
すると、全員が同じことを言った。
「それ以前に、お前、友達じゃないから」
作品名:フレネミー探偵は間違えない! 作家名:かなりえずき