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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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拷問テーマパークの途中棄権

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「拷問テーマパークへようこそ!
 ここに来るなんてあなたも特殊な人ですね!」

拷問テーマパークのマスコットは元気に出迎える。
奥にはさまざまな拷問器具が並んでいる。

「ここでは、さまざまな拷問が体験できますよ♪
 でも安心してください。
 実際に体が傷ついたり、死んでしまうことはありません」

マスコットの説明で合点がいった。
最初に幽体離脱を求めたのはそのためだったのか。

「では、時間までどうぞごゆっくりお楽しみくだ……。

 

 え? 一番キツい拷問はどれか、ですか?」

マスコットはこれまでのコミカルな動きを辞めて、
真面目な雰囲気を感じさせる。

「お客さん、本当にもの好きなんですね。
 ええ、でもたまにはいるんですよ、最恐を求める人」

マスコットは妖しい動きで手招きする。

「さあ、こちらへどうぞ」

案内された先には、体を固定する装置だけがあった。
もっと痛々しいものがあるのかと思っていた。

「人は終わりが見えないことにこの上ない恐怖を感じます。
 この拷問はそれを体験するのに最適なんですよ」

体を固定すると、上から水滴がぽつり、ぽつりと落ちてくる。
それだけ。

それだけなのに、水滴が落ちることで眠ることもできず
かといって起きていてもなにもすることはない。

これがどこまで続くのか先が見えない恐怖が押し寄せた。

 ・
 ・
 ・

「お客さん、お帰りなさい。
 どうですか? もう帰りたくなりましたか?」

首を横に振る。

「さすがです。実はさっきの拷問はあなたを試したんですよ。
 このパークの最恐は、これまで全員が途中で逃げています。
 だから案内する前にあなたを試したかったんです」

マスコットは鳴れた動きで次の拷問場所へと案内する。

「さあ、こちらへどうぞ」

案内された先には、金属でできた牛が置いてあった。

「人は閉鎖された状況でこそ、最大の恐怖を感じます。
 この拷問はそれを体験するのにこの上ないですよ」

金属のウシはぎぎぎと思い音を立てて開いた。
牛の中に入ると、外側化で火がつけられたのが分かった。

金属がみるみる熱くなっていくと、
この閉鎖された中で熱さと暗さで頭がおかしくなる。

 ・
 ・
 ・

「お客さん、お帰りなさい。
 "ファラリスの牡牛"拷問はどうでしたか?」

顔色を見たマスコットは、目の色を変えた。

「ふふ、やはりあれが最後じゃないことわかったみたいですね。
 さっきのはこのパークの2位。
 1位にはもっと強烈な拷問があるんですよ」

一応、パークの案内図を見てみるも
さっきの『ファラリスの牡牛』拷問より怖いものはない。

「パンフレットには載せていないんですよ。
 なにせ、体験した人で最後まで体験できた人はいないんですから。
 でも、あなたなら初めてのクリアができるかもしれないです」

マスコットは隠し通路を出して、パークの裏側へ。
本当に最後の拷問を体験すべくそのあとに続く。

「最初の『水滴拷問』は終わりが見えない恐怖。
 次の『ファラリスの牡牛拷問』は閉鎖された恐怖。

 そのどちらも併せ持った、最悪で最恐の拷問なんです」

案内されながらも、
おそらく体験者であろう人間がすれ違っていく。

「うわぁぁもう嫌だぁぁぁ!」
「こんなの耐えられない!」
「あんなの続けてたら頭がおかしくなる!」

マスコットの言っていた誰も完走できなかったのは本当らしい。


どこまでも終わらない恐怖。
どうしようもできない閉塞感。

そのどちらも併せ持つ究極にして最悪の拷問。


「さあ、つきました。
 ここがパーク最強の拷問場所です」

そこに待っていたのは……。

「『嫁との日々』拷問です」




「あなた! 休日なんだからどこか連れてってよ!」
「離婚? するわけないでしょ!」
「あなたはしゃべらないで。臭いから」


俺は耐えきれなくなって逃げだした。