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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ノベリスト非難訓練のお知らせ

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『それでは非難訓練をはじめます。
 ノベリスト生徒のみなさんは"おかし"を守って
 素早く非難訓練して校庭へ集まってください』

校長先生の声がスピーカーを通じて流れた。
それを合図に担任が話し始める。

「みなさん、それでは非難訓練をはじめます。
 まずは避難訓練の"お"……"追わない"からです!」


お:追わない




「せ、先生! 私のコメント欄が大荒れです!」

生徒の一人が手を挙げてSOS。
すぐさま、鎮火しようとコメントに手をかける。

が、その手を担任が抑えた。

「追わない、です。
 どんなにコメント欄が荒れても深追いしちゃダメです」

「でも、このままじゃ……。
 それに私も自分の作品がこんなに言われて納得できません」

「いいですか、非難している相手はテキトーに斜め読みして、
 テキトーに非難コメントしています。
 そんな相手にあなたが事細かに説明しても聞いてもらえますか?」

生徒ははっとした。
確かにコメントも1行で収まる程度のものばかり。
とても思考フィルターを通したとは思えない。

「ね? 深追いしてはいけません。
 言い返さなくても作品の価値が下がることはありません。
 では、次です」


お:追わない
か:変えない



先生が説明しようとしたところで、
ひときわ顔色が悪そうなノベリスト生徒がいた。

「どうしたの? どこか具合が悪いの?」

「いいえ、先生。見てください」

ノベリストの人気作品一覧に、
小説の傾向や流行を非難しているものがあった。

「この作品で非難されている内容……。
 ほぼ、僕の作品に当てはまっているんです。
 僕どうしたらいいか……」

「"変えない"ですよ。安易に作風を変えてはいけません」

先生は優しい笑顔で答えた。

「流行や傾向を分析して非難しているような作品を読んで、
 それに当てはまらないように変えてはいけません」

「どうしてですか……?」

「それが彼らなりの"非難の流行"なんですから。
 別の流行が出れば、流れるように"非難の流行"は変わります」

ライトノベルが人気になれば、美少女を非難し。
純文学が人気になれば、難しいと非難し。
詩が人気になれば、中身がないと非難する。

「彼らの非難流行に付き合って作風を変えたら、
 いつしか自分の書きたいものを見失ってしまいます。
 では、次に行きましょう」


お:追わない
か:変えない
し:叱らない


これまでごちゃごちゃ語っていた先生だったが、
その説教臭さが鼻についたのか嫌がらせが始まっていた。

マイページ、作品コメント欄は大荒れ。
先生の発表した書籍もことごとくレビューは低くされた。

「先生、どうして"叱らない"んですか!
 コメント削除することだってできるじゃないですか!」

完全にノーガードを貫く先生の姿に生徒が心配になる。

「いいですか。特にひどい場合は粘着されて、
 ありとあらゆるところで非難されます。
 ですが、けして"叱らない"でください」

「どうして!?」

「彼らは大事な宣伝塔だからです」

先生は粘着されている作品を見せる。
粘着がいるおかげでアクセス数も稼がれ、
ちゃんとした読者がブックマークを入れている。

「粘着非難で注目度が上がりますし、
 本当にその非難が正しいのかちゃんと読む人も増えるんです」

「でも、叱らないというのは……」

「叱ってしまえば、同じ程度の人間として見られ
 どうしても読者は距離を取ってしまいがちになるんです。
 同じ作品でもすぐ怒り返す人よりは、笑顔の人がいいでしょう?」

生徒たちはみなメモを走らせた。
その様子を見て先生はにこりと笑った。

「みなさん、ノベリスト非難訓練はばっちりですね!
 では実際の非難を体験して訓練を終えましょう!」












校庭にノベリスト生徒たちが集まった。
校長はよれよれのヨボヨボになっている。

「みなさんが非難されるまで20年かかりました……。
 もっといい作品を書いて早く非難されてください……」