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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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生後0日の転生会議室

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赤ちゃんたちが輪廻転生会議室に集まっていた。

スクリーンには出生候補の親の画像が出る。


候補1、見た感じ普通の親


「ああ、こういう親はいいよね」
「なんか普通に安心できるっていうか」
「やっぱり普通の家庭が一番だよ」

赤ちゃんたちは口々に褒め合うと、
噂を真に受けた赤ちゃんが真っ先に手を挙げた。

「じゃあ、わちが生まれますじゃ!
 わちがこの親の子になりますじゃ!!」

他に手を上げる赤ちゃんがいなかったので、
輪廻転生会議室から親の元へ転送された。

いなくなったのを確認すると、
赤ちゃんたちは口々に文句を言い始めた。

「いやぁ、あの親はないわぁ」
「普通の家庭が一番苦労するよね」
「財産も特にないし」

スライドが送られ、親のリストが移動していく。
赤ちゃんたちはいくつもの親候補を見ては選別していく。

「なんかどれも普通だねぇ。
 あとどれくらい候補があるの?」

「あと43,721,821組の親があるみたい」

「多っ!」

輪廻転生する赤ちゃんに対して、
赤ちゃんを望んでいる親の数のが圧倒的に多い。

このまま一つ一つ選んでいてはキリがない。

「なにか一つ条件を決めよう」

「それじゃ胸のサイズだろう。
 おっぱいの大きなお母さんは魅力的だ」

「「「 たしかに!! 」」」

赤ちゃんたちは親候補をカップ数で並び替えた。

「ああ!この親がいい!」
「この親で決まりだ!」

いくらかの赤ちゃんが転送された。
残された赤ちゃんたちはしたり顔を交わし合った。

「ふふ、バカは消えたな」

「ああ、胸で選ぶなんて
 前世をまだ引きずっているとしか思えない」

「自分たちが赤ちゃんだという自覚を持ってないな」

Fカップがありがたがっていても、
それを赤ちゃんの目線から見ればどうなるか。
さながらグランドキャニオンを見上げるようなもの。

そんなのにはありがたみも嬉しさもない。

「まあ、やはり親の基準は経済力だろうな」

今度は親候補を経済力順に並び替えた。


年収:1億円

「わああ! これ最高! この親にする!」

年収:10億

「こういう親を待っていた!」

いくらかの赤ちゃんが飛びついて手を上げる。
そのまま対抗もいないので転送された。

残った赤ちゃんは、にやりと顔をゆがめた。



「さて、本題に入ろう」



赤ちゃんは慣れた手つきでスライドを動かした。

「あいつらはまだ輪廻転生はじめてなんだろうな」

「本当の親候補選びはここからなのにね」

良条件をどんどん入力して親候補を絞っていく。
ついに、たった一人の親が残った。

容姿端麗で、性格面も最高で、家族関係も良好。
一流会社の社長で、遊んで暮らしても使い切れない経済力。

「これはすごい!
 100輪廻転生に1度の逸材だ!」

残った全員の赤ちゃんが同時に手を挙げた。

単に金持ちなだけでは育児放棄しかねない。
けれど、この親はどこをどう切り取っても悪いところはない。

「こんな親に生まれれば間違いなく成功できる!」

「今までの親で生まれた奴なんてカスだ!」

「うおおお! 絶対生まれたい!」

赤ちゃんたちは決め方を相談し、
一番前世がかわいそうな奴が転生することに。

「俺の前世は、貧乏な家だからいじめられて……」

「そんなのまだいいじゃないか。
 こっちなんて、生まれてすぐロッカー放置だぜ」

「いやいや、こっちは取り違えられたんだぜ? 最悪だ」

不幸自慢を続ける赤ちゃんの中で一人、手を挙げた赤ちゃん。

「生まれた分いいよな……こっちは死産だったんだ」

「「「うわぁ……」」」

誰も言い返せなくなり、必然的にこの赤ちゃんで決まった。

けれど、周りの赤ちゃんは誰も知らない。
この赤ちゃんは前世ごくごく普通の家庭に生まれたことを。

普通の家庭に生まれたことを呪い。
才能を遺伝してくれなかった親の恨み。
自分を成長させる土壌がなかった家庭を許さなかった。

――かならずいいところに生まれてやる。

それだけが頭の中でのたうち回っていた。

「さあ、最高の親の元に転生させてくれ!!」

赤ちゃんは転生








「あれ?」

しなかった。
会議室にぽつんと残ってしまった。

いくら待っても転生ははじまらない。

他の赤ちゃんたちも別の親元に続々と転生し、
ついにはただ一人会議室に残されてしまった。

それからもう20年以上も過ぎていた。

「まあ、あれだけの親元に生まれられるのなら
 どんなに時間がかかってもかまわないさ。
 間違いなく幸せになれるんだから」

これまでの妥協親を選んだ赤ちゃんとは違う。
必ず成功者の人生が送られるのだから。

すると、ついに赤ちゃんの体が光り始めた。

「やった! ついに最高の親に転生できる!」


目の前に光があふれて赤ちゃんの体が会議室から消えた。



"あなた、ねぇ見て。とっても可愛い顔をしているわ"


赤ちゃんが見た父親の顔には見覚えがあった。

「ああ、わちに似て賢そうな子じゃ」