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意味を持たない言葉たちを繋ぎ止めるための掌編

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痛みとは何ぞや


「例えば、君はシャープペンシルのとんがった先を腕に強く押しつけてみる。皮膚は沈み込み、そこにちくりとした小さな痛みが生じる。その状態を保つと少しずつ少しずつ痛みが増幅していくのがわかる。まるで痛みがみずからの意思をもって成長しているかのように。まるで波と波が交じり合い大きな波ができていくかのように、それは徐々に大きくなっていく。しばらくその状態を保ったあと、ペン先をそっと離す。今まで感じていた痛みは確かに軽減するけれども、実際のところそこにはまだ痛みが残っている。その感覚を言葉で言い表すのは難しい。鈍い違和感のような痛みだ。それがそこにはある。疼きのように、そこにはある。けれども、それはほんの些細な感覚だ。意識しなければすぐに消えてしまうような、それほど些細な感覚だ。だから、しばらく時間がたってしまうと、その疼きのような違和感には気がつかなくなっている。けれども、君は自信がもてない。そこから本当に疼きがなくなってしまったのか、あるいはその疼きに慣れてしまって気づけなくなっているのか。そう。憐れなことに君はそのどちらなのか確信をもてない。それを確かめるためにもう一度シャープペンシルのとんがった先を自分に突き立てる。けれども、何回繰り返しても、答えをだすことができない。それに気がつくことができない。君は永遠のループに落ちていく。ようするに、そういうことだ。痛みというのは理解しようとして理解できる代物ではないということだ。なぜなら、君という存在自体が痛みを構成しているひとつの部分なんだから。部分が全体を理解しようするなんて、死者をこの世に蘇らせるくらいに、馬鹿げていて不可能なことなんだ。ただ、君にはそれさえも気がつくことができないんだろうけれども。そう。とても憐れなことに」