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みゅージン
みゅージン
novelistID. 58264
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タイムマシンを作った男

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私は子供の頃からタイムマシンというものにあこがれていた。



いつしかタイムマシンを自分の手で作り上げて時間旅行をするのだ!
そう子供の頃から決めていた。



まだ小学生の時、父親に連れて行ってもらった映画でSFという物を初めてみた。
そこに出てきたのがタイムマシンだ。

洗練されたフォルムのマシンを使い、時空を自由に行き来する主人公。そのファンタジーさと時間を飛び越えるという発想に心奪われていた。

子供でも理解でき、そう遠くない未来が描かれていたその映画の影響で、私は科学者を目指した。



あれから何年経っただろうか。家の地下に作った冷え冷えとした研究室で、汚れた白衣に身を包み少しシワが増え始めた顔つきの私は一人笑っていた。



いま私の目の前には、たくさんの計器とつながったゴテゴテとした巨大な機械がある
タイムマシンだ。かつての映画で見たスマートな乗り物とは似ても似つかないほど不格好である。

しかし理論上は間違いなく動く本物のタイムマシン。先ほど電源の供給が始まりその巨体は不出来な唸り声の産声をあげたのだった。

そう、とうとう私は作り上げたのだ。子供の頃からの長年の夢をやり遂げた。



西暦2100年。

人類の科学力は留まるところを知らず、1世紀ほど前に全人類の悩みの種であったエネルギー問題や食糧問題は画期的なリサイクル法が発明され解決。星間ワープ航法が確立されいまや宇宙旅行が当たり前の世界となっている。火星や月も今やご近所さんだ。



ただひとつ。
こんなに科学が発展したにもかかわらずタイムマシンだけは未だに開発されていない。
タイムトラベルの理論はとっくの昔に解明されており、現在の科学力・技術力を使えば個人でも容易ににつくり上げることができる。いままで発明者が名乗りを挙げないのが不思議なくらいに。



なにか理由があったのだろうか。それともこの作り方を思いついたのが私だけだったんだろうか。



まあいいか。とにかくこれでまた人類の新たな扉が開かれるのだ。アカデミーで私を夢語り人だとバカにしていた連中の鼻をあかすことができる。



そうだ!あいつにも報告しなければ!
唯一わたしの味方になってくれてアカデミーの研究生時代からずっと一緒にタイムマシンの研究をしていた古き親友に。



そういえばここ最近、あいつから連絡がぱったり途絶えたな。
「タイムトラベルに関して重要な発見をしたんだ!また連絡する!」と興奮気味に話をしていたな。「お前にもあとで詳しく話をするから!…あ、そうだ!もし気づいても変な気を起こすなよ!」…そう電話を切った、それっきりだな。



もう数ヶ月も前になるな。

あの発見とは何だったんだろうか。変な気とはどういうことなんだろうか。あとでまた連絡をとって聞いてみるか。私のタイムマシン完成報告とともに。
別に急ぐこともない。時間は十分にあるのだ。なんていったって、いくらでも時間の中を動けるようになったんだから。

そうと決まれば、まずはタイムマシンの試運転といこう。電源は充分に確保してある。理論通り完璧に動いている。後は実際に乗り込んでタイムトラベルを体験するだけだ。私は意気込んで装置を操作し始めた。あとはこのボタンを押したらタイムトラベルがスタートする。



突如、なにか心の隅に小さな閃きが起こった。ほんの小さな思いつき。

ゾクッと寒気がした。

同時に自分の周りの景色がちょっとだけ歪んだ気がした。



次の瞬間、後頭部に激しい痛みを感じてそのまま床に倒れ込んだ。

私は最初なにが起きたのか理解できなかった。身体が動かない。かなり強く何かで殴られたのだと、その後少ししてから気がついた。



何が起こった!? 私が狙われた!? 一体誰が!? 何のために!?



うまく考えられない頭を抱えて思考を巡らせる。

そして床に這いつくばったまま、身体を傾けままゆっくりと振り向く。

そこには、薄汚れた白衣に身を包み、不敵な笑みを浮かべながら鉄パイプを構えるシワ顔の男がいた。



…私だった。

そこには確かに私が立っていた。



瓜二つのシワ顔がゆっくりと口を開く

「すまんね。私よ。もうわかっているだろう?さっき自分が何を考えたか。何を知りたいと思ったのか。…これでも科学者だからな。どうしても実験したくなる衝動は抑えきれなかった。知りたいという欲求は恐ろしいもんだな。…自分で自分を殺す事すら躊躇わないのだから。」



そう。私は先程思いついたのだ。些細な思いつき。誰でもタイムトラベルの話をするとき考えつく。みな同じ欲求に駆られ、実際に自分で実験してみたくなったから。科学者だから。



『過去の自分を今の自分が殺したらどうなるか』…タイムトラベルのパラドックスだ。



「まだ何も変化がないか。まだ生きているからなのか、時間軸が別だからなのか…。考察の余地があるな…。よし…それじゃあな。これで実験は完了だ。悪く思うなよ。」



そういって私は私に向かって鉄パイプを振り下ろした。



薄れゆく意識の中で、私は連絡の取れなくなった親友がどこに行ったのか、なんであんなことを言ったのかわかった気がした。

そして確信した。

だからいままで、誰もタイムマシンの発表をしなかったのだ。

…しかし、それを私に伝える力はもう私には残っていない。





静まり返った地下室。

そこにはゴテゴテとした巨大な機械やたくさんの計器などなく、ただ広く冷たい空間が広がるだけだった。