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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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オチだけがない物語

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大爆発が起きてなにもかも吹っ飛んだ。
それまでの設定すべてが吹き飛んだ。


※ ※ ※

「おお、本当にすごいんだなオチ爆弾って」

大爆発の影響でこの世界の設定はすべてリセット。
合わせて俺の記憶も吹き飛んだので、
爆発前の設定がどうだったのかはわからない。

今度の世界は、壁の中にいる世界で俺はドラキュラ。

設定からして意味が分からないし、
おそらくバッドエンドな気配がする。

「よし、もう一度オチ爆弾使ってみよう。
 本当にどんな設定の世界からでもオチになるのかな」

オチ爆弾を使ってみると、
壁がすべてふきとんでドラキュラの世界は絶滅。

その結果、パソコンのOSとなって生まれ変わった。

「おお、さすがはオチ爆弾。
 本当に別の設定になったぞ」

でも、最初のようにすべてリセットとはいかない。

「あれ? 俺はまだドラキュラの設定のままだ。
 不老不死の体になっているぞ」

オチ爆弾で世界の設定は吹き飛んだものの、
主人公である俺の設定そのものはまだ変わっていなかった。

パソコンのOSとなった今でも、
ドラキュラの不死身性は残っている。

「待てよ……このままオチ爆弾でいろんな世界に行けば、
 俺はどんどん万能で無敵の人間になれるんじゃないか?」

オチ爆弾を使った。
PCが吹き飛んで新しいパラレルワールドへつながった。

今度は闘牛士アイドルになっていた。

オチ爆弾を使った。

今度は全世界が氷漬けの世界につながった。

オチ爆弾を使った。

体がおもちゃになった世界になった。

オチ爆弾を使った。
オチ爆弾を使った。
オチ爆弾を使った。
オチ爆弾を使った。
 ・
 ・
 ・

「わははは! 大成功だ!」

オチ爆弾で世界を何度も終わらせたことで、別世界に行ける。
俺の設定はもう書ききれないほどの数になっていた。

けれど、画面右のスクロールバーに気が付いてしまった。

「……あれ、もうかなり進んでいるのに、
 ぜんぜん本当のオチが見えてこない……」

オチ爆弾をすぐに使っていたせいで、
本筋のストーリーそのものが進まなくなっていた。

それどころか設定を増やしすぎて、
オチ爆弾ですらもう片付かないことに気付いた。

「そ、そうだ! オチ爆弾をまとめて爆発させれば……」

オチ爆弾を使った。オチ爆弾を使った。オチ爆弾を使った。

今度の世界は科学者たちが世界を支配する……

「ああ、ダメだ! 別の設定に移るだけだ!
 これじゃ物語がいつまでもオチにならない!」

そこで、この世界で最も権威のある科学者のもとに向かった。


「あの、なんとか最高のオチ爆弾を作ってくれませんか。
 俺のとっちらかった設定すべて吹き飛ばせるようなやつ」

「無理ですね」
「はやっ」

「最高性能のオチ爆弾を作ることはできます。
 ですが、それでこの物語をオチさせることはできません」

「だったらどうすればいいんですか!
 このままじゃずっと俺はいろんな設定の世界を動き回るだけです!」

科学者はその言葉に、ひとつの爆弾を差し出した。

「それは?」

「これは初期化爆弾です。
 これを使えば、きっと後悔することになります。
 それでもこの物語を終わらせることはできます」

「よっぽどひどいオチで終わらせるんですね」

「……というより、あなたが気の毒です。
 毎回同じことをし続けるなんて辛すぎです」

「はあ?」

しかし、俺は不老不死で不死身でドラキュラで
パソコンでアイドルで人造人間でおもちゃで炎の体。

どんなに辛いことが起きようとも耐えられる。


「ようし、これでこの物語にオチがつくぜ!」

俺は初期化爆弾を使った。





物語の冒頭に巻き戻った。