ぼくとタロ助
ぼくは不安でいっぱいだった。あんな、動物を食べ物としか考えてないやつらがいるところに帰すことが。できることならタロ助を守りたい、でもどうやればいいかがわからなかった。相手は銃を持っている。ぼくが行ったところで笑われるだけだろう。でも悲しい姿を見るのはもう嫌だ、誰だって親を亡くすのは辛いはずだ。ぼくが守らないと、タロ助を。そうこうしているうちに目的地である山に着いた。
「ありがとな、でもここでいいぞ」
「いや、何があるかわからないから」
「ずっとついてくるつもりじゃないだろうな?」
「そんなこと、ないよ」
「ならいいけどな」
猟師のやつらと会いませんように、山に入ってから特にそのことを思い続けた。しかしその思いは早くに打ち砕かれた。突如として銃声が聞こえたからだ。どこからかわからない。姿も見えない。しかしタロ助はある方向へ一直線に走っていった。そのあとを急いで追いかけた。
「待ってよ、タロ助」
必死に追いかけた、でもタロ助の足は速くてすぐに見失ってしまった。どうしたらいいか、考えあぐねていた時に人の悲鳴が聞こえ、その直後何発か銃声がした。銃声がした方へ急いで走った。広い道に出たときに血を流し倒れているタロ助を見つけた。
「タロ助!」
ぼくはタロ助を抱き上げた。タロ助の血で服は汚れたがそんなことはどうでもよかった。
ただ何もできなかった自分が悔しかった。
「ごめんな、母ちゃんやったやつ見つけてさ首じゃなくて手に噛み付いたんだけど、その
時に撃たれちまった、アハハ、情けねぇな」
「そんなことないよ」
「でもいいんだ、俺たちを助けてくれる奴がいたってわかったから。いつも殺される恐さ
と戦ってたからそんなこと考えずに過ごせて楽しかった」
「まだこれからだよ」
「・・・お前みたいな人間に会えて・・・」
と言うなりそのまま動かなくなるタロ助。
「タロ助―――」
ぼくはタロ助を抱きながら泣いた、ぼくも会えて嬉しかった、そのお礼を言いたかったのに言えなかった。だってこんなに早く居なくなるなんて思ってなかったから。早すぎる別れにただ泣くことしかできなかった。
後日ぼくはタロ助のお墓を作り、手を合わせた。
今日も山に遊びに行くと銃声がきこえてくる。そのたびにぼくはタロ助のことを思い出すのだった。