SAGAシリーズ-2009-
SAGA4 震える矛
震える胸の内
響く怒音
肌の上を滑るように電流が走る
その後を追い縋るように粟立つ
表面上は堅く冷静
身の内は震える炎
血が踊り
骨が浮き立ち
神経が悲鳴をあげる
臓腑を全て吐き出してしまえたら多少は楽になるかもしれない
収まらない潮
今にも突き破りそうな勢いで流れる脈拍
僅かに震える唇が一度
熱く火照る吐息を溢した
耳障りに思っていた金物同士のぶつかる音
なめした厚い牛皮を叩いて整える音
むせ返る臭いと熱気
キリキリと舞躍る神経では全く感触がわからない足の下の砂粒
いくつも踏み砕いては行進を続ける
進め、我が脚よ
響け、我が鼓動よ
唸れ、我が腕よ
穿て、我が剣よ
槍先を突き立て走れ駿馬
開戦の音と共に響く轟声
地響きに揺れる身体は割れゆく大地を思わせる
あがる土煙に四方は区別も無く
進め、我が脚よ
響け、我が鼓動よ
唸れ、我が腕よ
穿て、我が剣よ
鎌首を擡げる死神に囚われたくなければ進め
迷うな
止まるな
走り続けろ
熱い血潮が視界にけぶり
立ち上る蒸気がその脚を捕らえようと
肉を抉り骨を断ち切るその腕を緩めるな
震える肌が何度も粟立ち
止まる事も休まる事もない鼓動を感じ
手足が痺れるその先にある憤怒を見る
作品名:SAGAシリーズ-2009- 作家名:筒井リョージ