インベーダー覇権戦争
これで4連続の勝利に他国はイライラしていた。
「おのれジャップ! ちょっとばかりゲームがうまいだけのくせに!」
「メガネで七三分けのダサダサ民族が!」
「ゲームでなければあんな虚弱人間なんてひねりつぶせるのに!」
第4次世界大戦から戦争の勝敗は、
インベーダーゲームで争うことに決まっていた。
世界で誰もがやっているゲームであるのと、
関係のない人が被害を受けない犠牲者ゼロの平和的な戦争。
というより、小競り合いに近かった。
「だいたい、ゲームで勝敗を決めるなんてのがおかしいんだよ」
「あの国じゃゲームの英才教育を始めているらしい」
「勝利ってのは命を張り合って勝ち取るものだと教えてやろう」
言葉を交わしながらもお互いの意思が
ひとつに収束していくのが分かった。
「ようし、あの引きこもり民族に
画面上ではなく現実で戦争を見せてやろうぜ!」
他国はえりすぐりの特殊部隊を編成し、
完璧な作戦で日本へ攻め入ることを決めた。
なにせ相手はゲーム"だけ"が優れている国。
銃もなければ戦闘機もない。
せいぜいやっているのは避難訓練くらいだ。
「あまりに物足りないからって、
仲間同士で撃ち合いを始めるんじゃないぞ」
「HAHAHAHAHA!」
特殊部隊は日本への上陸になんなく成功すると、
スムーズに作戦を進めていった。
「グッド、少子化というのは本当なんだな。
見張りもいなければ兵士の姿も見当たらない」
「これなら簡単に征服できるぜ。
どうしてゲームの勝敗なんかで戦争を決めていたんだ」
ついに本拠地まで誰一人犠牲者を出さずにやってきた。
「イージー過ぎて手ごたえなかったぜ。
さあ、ジャップどもに火薬と血の匂いをかがせてやろうぜ!」
本拠地のドアを開けると、
無人の武装ロボットがみっしり並んでいた。
それがなんなのか理解する間もないまま、
ロボットの掃射により特殊部隊は全滅した。
『敵、全滅を確認しました』
別室で控えていた本拠地の人たちは、
もう敵がいなくなったインベーダーの画面を見ていた。
まさに世界一の速度で敵を撃ち滅ぼしていた。
「いまどき、生身で来るなんてね」
「どうせロボットの操作技術で強さが決まるんだから
戦争はゲームで競うようにしたのに……愚かな人たちだ」
ロボットの操作パネルを見ていると、
また画面に新しい敵(インベーダー)が表示された。
「また名古屋撃ちで倒してやるか」
作品名:インベーダー覇権戦争 作家名:かなりえずき