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掌編 二人で

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  ほんとさ嘘じゃないさ
  ずっとずっと心に咲く
  枯れない花なのだから
  君に又会えて良かった
  やり直そうまた二人で

わたしの心はゆれていた。予想はされた言葉だったが、そう簡単には答えられない。久しぶりに会った彼の目を見ていると判断ミスを犯すかもしれない。それでわたしは彼に背を向けしゃがんで、小川の側の小さな花を見ていた。生命力を感じさせる薄桃色の可憐な花。彼と生活を始めた頃のわたしもこんな風に生き生きと輝いていた筈だった。やっと孤独にも慣れたのに、と心の中でわたしは彼に文句を言っている。

まるであの頃のように彼はわたしを誘うけれど、もう二人ともそう若くはない。いや若くないからこそ、彼とやり直したほうがいいのではないか。私のついたため息で目の前の小さな花が揺れていた。彼はわたしの側にしゃがんで話を続けた。

  身勝手な言葉だけどさ
  反省をしてるんだ深く
  もし許して貰えるなら
  修業した甲斐があった
  店でもやろうか二人で

そうよ身勝手なのよ。反省をすればすべてが無くなってしまうというの。あなただってわかるでしょう、いや、わかってないからそんなに簡単に謝ってしまうんでしょうね。たとえ許したとしても心の傷は消えない。わたしは立ち上がって彼を見下ろした。見上げる彼の姿が少し哀れっぽく見えたが、そもそも反省なんてものは形に見えるものでもない。もしかしたら彼の謝っているのは、経済的にだらしがなかったこと? そんなのは問題ではない。少し我慢をして、わたしが働けばなんとかなる。

ゆっくりと立ち上がる彼の目は嘘をついているようには見えなかったが、わたしの問題は現在ではなく、まだ過去を引きずっている。あなたは浮気をしたのよ。その事実が時が経ったから消えてしまうとでもいうの? 悔しさと悲しさと嫉妬とで刻まれた傷、とそんな言葉では言い表せない信頼というものを壊してしまった罪。いくら修業したって消えないのよ。

  もうずっと離さないさ
  返事をくれないか早く
  後悔はしたくないから
  思いを全て吐き出した
  二人でやろうよ二人で

まるで最初に出会った頃のように、熱心にわたしを口説く。彼は過ぎ去った過去よりも二人一緒に未来へ向かおうとする意思と情熱は感じられるのだけど、わたしの揺れは収まりかけていた。

。母親のように大きな母性で見れば全てを受け入れて彼を愛し続けることはできるのだろう。でもわたしにはそんな母性は無い。やんちゃ坊主の子守で一生を終えたくない。

あなたは喋りすぎよ。もうすっかり彼とのやり直し生活をしてしまったようになって、わたしは彼に言った。

「さようなら、少し傷が癒えたような気がするわ」



作品名:掌編 二人で 作家名:伊達梁川