必ず順番通りに進めろ!
「ふん、お前のような若造に大事な娘を渡せるか。
最近の若い奴と来たらルールもろくに守れない。
ルールすら守れないのに、娘が守れるわけがない」
「それは違いますよ、お義父さん。
僕はルールと手順をなによりも重んじる男です。
娘さんとの関係も順番をことごとく守ってまいりました」
「ほう、聞かせてもらおうか」
※ ※ ※
僕はとにかく手順を守らないと気が済みません。
昔から説明書を熟読するタイプなのです。
娘さんとの関係も順番通り進めてきました。
「ねえ、私たちってもう付き合っているのよね」
「ああ、もちろん。
あの夜から僕は君の恋人だ」
「だったら、デートに行かない?
付き合って1ヶ月になるのに
まだ食事しかしていないじゃない」
「ダメだ! まずは食事を5回重ねて。
その後にデートへとステップアップするのが
正しい順序であり手順なんだ! 例外はない!」
「そ、そう……」
このように、僕はとにかく手順を重んじ
娘さんとの交際もすべて順序通り進めました。
「そろそろ私の家に来ない?」
「ダメだ、恋人の家に行くのは
4回目のデート以降じゃないと」
「最近、ぜんぜんキスしてくれないわね」
「3回目のデートと12回目のデートじゃないと。
手順を守らないと、僕らの関係も悪化してしまう」
※ ※ ※
「――ということです。
これで僕がいかに手順を守る男だとわかってもらえましたか?」
お義父さんは複雑な顔を娘に向ける。
「お前は、この男のどこがいいんだ?
話を聞いているとただただうっとおしいだけに見えるが」
「確かに手順を守りすぎるところはあるわ。
でも、だからこそ連絡を欠かしたことはないし
手順以外のことはしないから安心できるのよ」
「なるほど、確かに浮気はしないだろうな」
お義父さんの顔がここに来てやっと和らいだ。
「わかった、君に娘を譲ろう。
手順を守る君なら娘を悲しませることはしないだろう」
「ありがとうございます!
これからも娘さんを幸せにする手順を守っていきます!」
僕はお義父さんと固い握手を交わした。
親子の絆と、僕に向けられた信頼が掌越しに伝わった。
「最後に、君が娘と結婚に至った理由を教えてくれるかな?」
「あ、子供ができたので」
「順番逆じゃねぇか!!」
作品名:必ず順番通りに進めろ! 作家名:かなりえずき