成人式は洗脳の社交場
この式を境にみなさんはオトナになるのです」
ダメだ、もう我慢できない。
主人公がトイレのため席を立つ。
その後、壇上には大きな機械が運び込まれた。
「これから皆さんには催眠にかかってもらいます。
大丈夫、すぐに終わりますから」
機械のスイッチが入り、オトナ洗脳が始まった。
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「ふぅーーすっきりした」
主人公が会場へ戻るころには、
オトナ洗脳がすっかり終わりきっていた。
「ようし、飲みに行こうか。
とにかく飲みに行こう。飲みの席で話そう」
「俺の仕事は○○なんだけど、どこどこの会社が……」
「だいたい今の若い奴ってのは本当にダメで~~」
「お、おい。どうしちゃったんだよ」
同年代のはずなのに会話の内容が急にオトナ臭い。
やたら飲み会をやりたがり、
今まではテレビやゲームの話題だったのに
話題の中心は仕事関連の愚痴ばかり。
そして、極めつけは。
「育休なんてのは、女の甘えなんだよなぁ」
「女を偉くすると図に乗るからな」
「まったく、女は男には勝てないんだから」
まるで根拠のない女批判をするようになっていった。
「みんなどうしちゃったんだよ。
本当は酒なんて好きじゃないんだろ?
前はもっといろんな話題で話していただろ!?」
「昔はよかったなぁ……」
「いや、数分前だから!!」
いくら説得しても昔を懐かしむばかりで心に届かない。
このままじゃ俺だけみんなに取り残されて……。
いや、違う。
みんなが催眠にかかっているだけだ。
オトナのフリをしているだけに決まっている。
※ ※ ※
『○○地区 合同同窓会のお知らせ』
俺がセッティングした同窓会には、
成人式に参加した連中が集まっていた。
オトナ催眠にかけられた彼らは同窓会に弱い。
「みなさん、それでは本日のメインイベントです」
壇上には大きな機械が運び込まれた。
「これはコドモ催眠装置です。
全員、いますね? スイッチオン!」
無理にオトナになる必要なんてない。
自分たちの歩幅で俺たちはオトナになるべきなんだ。
「あ、あれ……」
「俺たちはなんで酒なんて好きでもないのに
こんなに好き好んで飲んでいたんだ?」
「それより、昨日やったゲームがさ~~」
全員にコドモ催眠がいきわたっていた。
これでもううすら寒いオトナごっこから解放されるんだ!
そこに、装置の開発者がやってきた。
「効果の方はどうです?」
「ばっちりです!
おかげでみんながコドモに戻りました!」
「みんな? それはおかしいですね?
オトナ催眠も、コドモ催眠もどうしてか女性にはきかないんですよ」
「えっ?」
男たちは同窓会の食べ物ではしゃいでいた。
「おい見ろよ! こっちに唐揚げあるぞ!」
「ジュースミックスしてみようぜ!」
「どっちがいっぱい食べれたか競争だ!」
その様子を、女は冷めた目で見ている。
「男ってなんでこう……子供なのかしら」
作品名:成人式は洗脳の社交場 作家名:かなりえずき