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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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テレパシーだけ使えればいいとでも?

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現代では俺にふさわしい職場がないので、
未来に就職活動へやってきた。

「ということで、就職先はないですかね?」

"テレパシー基地局は今、人手に困っています。
 就職先でしたらそちらがいいですよ"

「わっ! なんだ!? 頭に直接声が!!」

"いまどき声なんて古い方法でコミュニケーションしません。
 若い人はみんなテレパシーでするんです"

基地局にやってくると、即日採用された。
ここでの仕事は基地局に送られてくるテレパシーを
中継して別の送信先へ送るのが仕事。

"いいですか、絶対にテレパシーをいじってはいけませんよ"

"なんでですか?"

"あなたも辞めなくちゃいけないからです"

慣れると会話よりも
直接思考を介するテレパシーが早い早い。
いつしか声を出す方法も忘れてしまった。

テレパシー中継の仕事にも慣れてきた頃、
女から男に向けてのテレパシーが届いた。

"もう信じられない!
 私がいながらほかの女のもとへ行くなんて!"

それからすぐに男のテレパシー。

"違うんだよ。誤解なんだよ"

男のテレパシーを中継する手が止まった。
この男のテレパシーのやり取りから誤解であることは、
基地局に努める俺ならいくらでも証明できる。

けれど、この男の口下手から察するに
このままでは間違いなく二人は別れてしまうだろう。


俺は男のテレパシーに手を加えて中継した。


"違うんだよ、あれは同窓会の帰りで下心はない。
 いつも君のことが好きだし、浮気なんてしないよ"

"そうだったの……私、誤解していたみたい"

ちゃんと説明すれば、理解してもらえないことなんてない。
これだけテレパシーが発達した未来でも、
まだコミュニケーションですれ違うなんて、人間は変わらない。


それから数日後、俺の体に変化が現れた。

常に頭の中には中継先の女のことがチラつく。
これじゃまるで恋をしているような……。

"いいですか、絶対にテレパシーをいじってはいけませんよ"

テレパシーに手を加えることは、
仕事のルールだからではなく、俺を守るためのものだったんだ。

今や、俺の思考は完全に交際相手の男と同化している。

ついに我慢できなくなった俺は男の記憶を頼りに、
交際相手の女の家までやってきた。

大きな屋敷でまさにお嬢様と言わんばかり。

「おや、お客さんですか」

"これをお嬢さんに渡してください"

俺はらラブレターを年老いたメイドに渡した。
テレパシーだと必ず基地局を経由するので、
足がつかないで彼女に告白するのはこれしかない。

郵便なんてものはもう存在しないので、
直接渡すよりほかにない。


ラブレターを受け取った女が、
いつ俺にテレパシーを送ってくれるか楽しみに待っていた。

けれど、いくら待っても返事はやってこない。

バカな。
明らかに今の男より俺の方が優れているのに!

"これをお嬢さんに!"

「ああ、またあなたですか」

再びメイドにラブレターを渡す。
今度は結婚指輪入りだ。これでもう無視できない。


が、それでも女からテレパシーはない。

どういうつもりだ。
こうなったら直接伝えるしかない。

ラブレターをもって女の家に乗り込んだ。

"あ、あなた誰!?"

俺は黙ってラブレターを差し出した。

"これは……手紙?"

さあ、あとはこれを読んでもらえれば
俺がいかに優れていて君のことを愛しているかが……。

"でもごめんなさい。
 文字なんてもう学校で習わないから読めないわ。
 婆やならテレパシー使えないけど文字は読めるはず"

それじゃ俺が渡していたラブレターは……。


「うふふふ、こんなおばあちゃんでも春が来るのね」

女が呼ぶと、あのメイドがやってきた。
その手に俺が用意した結婚指輪をつけて。