こすもす畑の少女
しかし、彼の存在を誰もが知っていながら、彼と顔を合わせても知らんぷりの人間が多かった。確かに、不細工な男であった。いつも火を焚いているから、赤鬼の様な顔だ。身体は人一倍大きいから、見るからに怖いと感じる。
四季を作り出すことも彼の火の焚き具合なのだが、その失敗でさえも、多くの花や動物の命が失われてしまう。彼は人間になって、神との違いを知った。神はすべての行いが正しかった。しかし、人間の彼は時には正しくない行為もあったと感じるのだった。それは、異常な暑さや、寒さである。神は生命に与える試練だと言うが、彼は自分の失敗だと感じるのだ。
彼は自分でも納得のいく秋の季節が出来たと感じた。コスモスが畑一面に咲いていた。少女がそのコスモスの花を一輪髪飾りにした。彼はその少女を見て体全体が熱くなった。すると気温は見る間に上昇した。真夏の暑さである。コスモスの花は萎れ、少女は顔に汗を流した。
彼はあわてて火の勢いを加減したが、自分の体の火照りは抑えることは出来なかった。萎れたコスモスは枯れてしまった。彼は少女に再び会うことは出来ないと思いながらも、コスモスの花を咲かせたかった。花が咲けば少女に会えると思ったのだ。
人間になった彼は神に戻りたいと思っていた。神は全能であるから、枯れたコスモスも生き還れせることが出来るのだから・・