気持ちのままに
ほおずき
庭の片隅にほおずきの実が3つぶら下がっていた。その横の柿の木の葉には、セミの抜け殻が2つ付いたままだ。今年の夏は暑かったせいで、庭先でアブラゼミが喧しく鳴いていた。すでに10月、夜になれば秋の虫が啼いている。季節の流れは早いものと感じながら、ほおずきを見ながら思い出したことがあった。
幼いころ、ほおずきの実の中身を針で穿り出し、それを口に入れて、空気を入れ、舌と唇の内側で押さえると、ブウウと音が出る。なかなかほおずきの実を出すのも難しく、袋に着いていたところが丸く硬くなっているのだが、その部分が破れてしまうと失敗なのだ。5個ほどの実から音が出るようになる実は、2つ出来れば良い方だ。
遊ぶものも自分たちで作った時代だった。紙鉄砲、竹馬、チャンバラの刀など・・
ほおずきを摂り、袋を破るとだいだい色の丸い実が見えた。懐かしい実である。早速、ほおずきの実を指で揉んだ。ある程度柔らかくなったら、針を使うが、芯の部分は小さな口からはなかなか出すのは難しい。ここで失敗したのだった、と思いだした。やはり今日も失敗。
「母さん、これ作ってくれないか」
「忙しいの何よ」
ほおずきを見せると
「子供みたいなことがやってほしいの」
妻は笑いながら、私からほおずきを受け取ってくれた。