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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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魔法で何でも解決するんじゃない!

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「不便! 不便すぎるわこの世界! もう耐えられない!」

異世界からやってきた魔女は怒っていた。
それを必死に現代人がなだめる。

「どうしたのよ急に。
 魔法のない世界でゆっくりしたいって
 別世界旅行にやってきたんじゃないの?」

「だとしても不便すぎるわよ!
 火をおこすのにガス使うとか原始人レベルよ!?」

普段なら杖の一振りで炎は出てくる。
けれど、この世界ではその「普通」ができない。

「……もういい帰る。
 早く帰りのゲートに行くわ」

「歩いていくと1時間以上かかるよ?」

現代人は手元ですぐに検索をかける。

「歩くわけないじゃない、空を……のはできないのか。
 それじゃしょうがない。電車を使おうかしら」

「電車はあと10分後にくるみたい」

「10分!? そんなの時空魔法で早めなさいよ」

「できないよ!?」
「なんで!?」

「だから、この世界では時間を加速させることも
 空を飛ぶことも、魔法でやれることはできないんだって」

「わかったわよもう! 待つわよ!! 待てばいいんでしょ!!」

魔女はトロい電車にイライラしながらも、
現代人と一緒に帰りのゲートまでやってきた。

魔女は迷わずにゲートへと踏み出した瞬間。


【エラー。魔法中毒病の疑いがあります。
 治らない限りゲートの使用はお控えください】


ゲートはみるみる縮まってしまった。

「魔法中毒病!? ふざけんじゃないわよ!
 だったら魔法で強引にでもこじ開けて……」

「だからできないんだってば!」

現代人は手元で原因を検索にかける。

「……ゲートは、異世界への病気の感染拡大防止のため
 なにか病気を持っている人の通行は許可しないって」

「それじゃ、魔法中毒が治らない限り帰れないの!?
 行きは大丈夫だったのに!?」


魔法を使えない世界に来ながらも、
頭の片隅で常に魔法を渇望していたために
魔法中毒が顔を出したのが原因 ……Maho pedeiaより


「……だって」

「うう……こんな世界に来てしまったばっかりに……」

この日から、魔女の魔法卒業に向けた練習が始まった。



まずは体から魔法依存を完全に追い出す

「はい、ダッシュ! ダッシュ!!」
「ふぇぇ~~ん! 魔法ならすぐなのにぃ~~」
「魔法にすぐ頼らないの!!」


次に、魔法生成物と比較するクセを改善する。

「あーーあ。魔法なら同じ材料でも
 別の料理がいくらでもできるのになぁ……」

「ほら、そうやって魔法との比較をしない!」
「はぁ~~い」


最後に、魔法衝動への対策を行う。

「もう間に合わない! 魔法を使うしかない!」

「大丈夫よ、ここからタクシーに乗って駅まで行って
 5分以内に新幹線に乗ればぎりぎり間に合うわ!」

魔法だけ、しかない状態から
魔法以外にも方法があることを叩き込む。

それらの訓練は現代人の徹底した管理によって進められた。



気が付けば、もう魔女が「魔法」と口にしなくなっていった。

「ふふ、もう私がサポートできるのはないみたいね」

「これまでありがとうね、現代人。
 あなたがスマホで細かくデータを管理していたから
 私はここまできちんと正しく中毒を乗り越えられたの」

「ううん。全部あなた自身の努力よ」

「現代人!!」

二人はゲートの前で熱い抱擁を交わした。
魔法では感じられない肌越しのぬくもりが心地いい。

「そうだ、現代人。
 あなたもゲートに入って、私の家に遊びにきてよ。
 私、まだあなたにお礼の一つもできていないから」

「魔女……! いいの?」

「もちろん。もう依存はしていないけど、
 私の魔法で現代人を最高にもてなしたいの」

「嬉しい! 行かせて!」

魔女からはもう完全に魔法中毒を克服した。
便利で全能な魔法の力を中心に動くのではなく、
自分のサポートとして魔法を位置づけている。

それを確信した現代人は安心して、ゲートに向かった。





【エラー。中毒病の疑いがあります。
 治らない限りゲートの使用はお控えください】