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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ダイヤモンド家族の秘め事

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私は裕福な家だった。
そのことは友達にも隠しているし、
金持ちらしい振る舞いも無意識のうちに避けていた。

友情が壊れるよりも、お金を使うことで
交通事故で死んでしまった父親を思い出してしまうから。

「ねえ、今日の放課後スイーツ食べに行かない?」
「いくいく~~」

「宝子は?」

「うん、私も行く」

みんなと価格帯が同じものにしなくっちゃ。
女の子の友情は異質なものには厳しいもの。



放課後になり、みんなで店に向かっているとき、
後ろから迫ってくるタイヤの音に気付けたのは
最後尾を歩いていた私だけだった。

「危ない!!」

みんなをとっさに突き飛ばすのが精いっぱいで、
もう私が避ける時間なんて残っていなかった。


ガシャンッ!!!

原型を留めないほどめちゃくちゃにつぶれてしまった。





車が。

「宝子……!?」

車に真正面からぶつかったはずの私の身体は無傷。
それどころか、車の方がひどいことになっていた。

唯一、私に起きた変化といえば
顔を覆っていた皮膚の一部がはがれて
中のダイヤモンドが見え始めていたことだけ。


数十分後、私が運ばれた病院に母が飛び込んできた。

「宝子! 車にひかれたって聞いたわ! 大丈夫なの!?」

「ああ、お母さん。大丈夫だよ、一応病院に来ただけだから。
 それより……どうして私の体はダイヤモンドなの?」

「ああ、よかった。それじゃ家に帰りましょう」
「スルー!?」

母を何とか問い詰めると、やっと重い口を開いた。

「今まで黙っていたけど、お母さんもお父さんも
 実はダイヤモンド☆人間だったのよ」

「なんでどっかの芸能人みたいに☆入れたのよ」

「お父さんも、あなたには普通の女の子として
 成長してほしくてあえて黙っていたの。
 この親心だけはわかってくれる?」

「うん、別に怒ってないし……。
 それに頑丈な体っていうのはいいことじゃない」

失われた皮膚を再び表面に貼り付けて、私は退院した。
見た目には完全に普通のきゃしゃな女の子。
ただし、私を壊せるものはどこにもない。




翌日から私を見る目が変わった。

「宝子ちゃん、一緒にお昼食べない?」
「宝子ちゃん、今度遊びに行こうよ」
「宝子ちゃん、友達になってくれる?」

一斉に私の周りには人だかりができた。
今までグループでも地味な方だったのに、
初めて自分が中心にいる気持ちよさを感じていた。

でも、それは彼女たちの二言目を聞くまでだった。

「……高級ランチおごってくれるよね?」
「ファーストクラスで海外行きたいな」
「友達なんだから、プレゼント買ってくれるよね?」

すでに学校中に私がダイヤモンド人間だと広まっていた。
彼女たちはみな、私の体にしか興味がなかった。

「いや、あのね、確かに私はダイヤモンドでできているけど……。
 だからといって、すごく大金持ちというわけじゃ……」

本当はお金はあるにはある。
でも、それはお父さんのお金だ。

「でも、宝子ちゃん全身がダイヤモンドなんでしょ?」
「これだけ大きいならいくらになるのかな」
「爪の先だけでもいいから、分けたっていいじゃない」

誰も話を聞いてくれない。
私の中でちやほやされる嬉しさが葛藤を続けている。

そして……。


「……わかった。みんなに髪をあげる」

みんな嬉しさのあまり歓声を上げた。
お父さんの残したお金に手をつけるくらいなら、
いっそ私自身を売ってでも……。

私は自分の長い髪に手をかけて、
根元から引き抜けるように力を込めた瞬間。



「宝子!!」


学校に母がやってきて、そのまま私をビンタした。

「宝子! なにやっているの!?」

「私みたいな人間でも、みんなに必要とされているの。
 だったら、それに応えなくちゃ」

「そんなの違う! ただ利用されているだけじゃない!」

母の言葉に私の目が覚めた。
友達を失う恐怖で、私は自分の体を破壊するつもりだったんだ。

「お父さんが交通事故でいなくなって……。
 あなたがそんなことをやり始めたらお母さんどうすればいいの?
 もっと自分を大事にしてよ!」

「……お母さん……」

「私たちはダイヤモンド人間。
 だからこそ、自分を大事してほしいのよ」

自然と涙がこぼれ、母親に抱き付いた。

「お母さんごめん! 私間違ってた!!」

「わかってくれたのね。いいのよ。
 世界のどれだけの人がお金に目がくらんでも、
 私たちだけは最後まで人を大事にする人間でいましょう」

教室のみんなも自分たちの行動を恥じて帰って行った。
私はこれから本当の友情を探せる気がした。




「ところでお母さん」
「なあに」

「お父さんが交通事故って変じゃない?」


「いいえ、変じゃないわ。完全な交通事故よ。
 車にはねられて粉々になったのよ。
 まるでダイヤモンド同士でぶつかったみたいに粉々にね。

 あ、でも安心してね。お金はまだまだ残っているから」


父の死後、一気に裕福になった理由がわかったけど
私は怖くてそれ以上聞くことができなかった。