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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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深海予報を信じてよぉ!

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合格率0.00001%の超難関試験をクリアし、
ついに念願の深海海象予報士になることができた。

これで頭上に浮かぶ「海」の予報をすることができる。

「今日の深海予報は、一日穏やかな海でしょう。
 ただ海底が低下しているため異常海象にご注意ください」

予報の後で潜水艦の運行状況がアップで映し出される。

昔は、空に飛行機が飛んでいたらしいけれど
空と海がひっくり返った現代では潜水艦のが
交通手段としてメジャーになっている。

「これで本日の深海予報を終わります」



翌日、テレビ局には苦情が殺到した。

『穏やかな1日だって聞いていたのに!』
『ダイオウイカが出てきて潜水艦が飛べなかった!』
『予報外してんじゃねぇよ! バカ!!』

「そんな……!」

どれもダイオウイカが出たことで、
潜水艦が運航取りやめになったことへの苦情を訴えていた。

そうはいっても神出鬼没のダイオウイカが、
人間側の都合でどうこうできるものではない。

「こうなったら、私の力で何とかするしかない!」

深海予報士になる前は、
海の女として漁をしていた頃の血が騒ぐ。

ここで予報士として信頼を取り戻すためには、
ダイオウイカを狩るしかない。

 ・
 ・
 ・

「本日の深海予報です。
 今日は深海にダイオウイカの出現もないでしょう。
 ただ、海底低下もあるので異常海象にはご注意ください」

深海のダイオウイカを軒並み狩ったので、
もう予報を狂わされることもない。

予報を終えて安心した矢先、
ふたたび苦情が飛び込んできた。


『ヒノオビクラゲが大量発生して太陽の光が入らない!』
『アンコウの魚影が眩しすぎて困る!』
『また予報外しやがって! 死ね!!』

それを見た瞬間、頭が真っ白になった。




「……それで、相談って?」


海象予報士の先輩に話を聞いてもらうことに。

「もう私……自分の予報に自信が持てないんです……。
 失敗するとあんなに手ひどく言われてしまって」

「気にすることないよ。
 予報なんて予言じゃないんだから。
 当たるも外すも信じた人の自己責任なんだって」

先輩はあっけらかんと答えてしまう。
私も先輩みたいなメンタルがあれば平気なのだろうけど。

「あんたに苦情を言ってくる奴らも、
 結局は"自分の予定が狂った"ことの八つ当たりなんだし
 本気でとらえることないよ」

「そうですけど……」

「絶対に当たる予報の方が逆に怖いって。あははは」

絶対に当たる予報……。

「それだ!!」

私は頭の中にいいアイデアがひらめいた。
これなら誰にも批判されないで済む。


翌日の海象予報はいつもの倍以上の時間がとられた。

「海底の低下により何が起きるかわかりません。
 ダイオウグゾグムシの大量発生、
 リュウグウノツイカイの出現、チョウチンアンコウの光害……(略)。
 みなさんはありとあらゆる被害に備えてください」

私はありとあらゆる可能性を提示した。
結果として外す数のが多いけれど、1つでも当たればいい。

これなら"絶対に当たる"予報なんだ!


予報を終えて深海の様子を見る。
なにかしら出ているだろう。


「……あれ!? どうして!?」


こんな日に限って深海は穏やかそのものだった。
何かしら起きる想定で出していた『必ず当たる予報』が、
まるでなにも起きないためにはずしてしまった。

案の定、ついに怒り狂った人たちがテレビ局に押し寄せる。

「予報を信じて旅行日程変えたのに!」
「お前の予報なんかまるで当たらないじゃないか!」
「いつも異常海象とか言いやがって!!」

「ほっ、本当に異常海象なんですよ……」

いくら専門性の高い知識から裏打ちされた予報でも、
彼らにとっては外した予報に価値はない。

「不安をあおるだけの予報士めっ」
「なにが異常海象だ! 異常なのはお前だっ」

「もういい!! こんな嘘つき放っておこうぜ!」

人々はブチ切れたままテレビ局を去っていった。




「お、おい……あれなんだ?」

その後、深海が地上に落ちてきた。
この大災害以来、誰もが予報を信じるようになった。