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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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支持待ち人間 from 過去裁判

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「では、過去裁判を開廷します」

裁判所には過去に迷惑をかけられた人たちが並ぶ。
主人公をいじめていた同級生。
主人公に嫌がらせをした上司などなど。

「原告はこれらの人間を
 無罪・有罪を決めることができます」

「ぼ、僕が……ですか?」

主人公は青ざめた。
自分で過去裁判を申請したものの
いざ自分の決断で人の人生を左右すると思うと……。

「もう過去の話じゃないか!」
「反省している! だからいいだろ!?」

被告たちは必死に訴える。

「反省……してるのかな」

見た目には反省しているように見えるが、
過去にひどい目にあわされたので有罪にもしたい。

そのための過去裁判。

「ダメだ! 自分一人で決めたら
 絶対に間違った判断をしてしまう! みんなに聞こう!」

主人公は裁判所でケータイを操作して、
ネットの様々な場所に判断を仰いだ。


無罪を支持:10%
有罪を支持:90%


「良かった! みんな支持してくれてる!
 僕の判断はやっぱり間違っていなかったんだ!」

主人公は安心して全員を有罪にした。



それから数日後、主人公の周りにいかつい男たちがやってきた。

「よくもアニキを有罪にしてくれたな」
「絶対に許さねぇ! フクロにしてやる!」

「ちょっ……待ってって!!
 僕だけの判断じゃないよ!
 ちゃんとみんな支持してくれた上での結論で……」

「最終的に選択したのはお前だろ!」
「途中経過を考慮し……」

まだすべてを言い切らないうちに、
主人公は復讐の袋叩きにあった。
ご丁寧にケータイや持ち物もすべて破壊されたうえ。

「うう……僕が……僕は悪くないのに……」

許せないのは自分を殴った奴らではなく、
自分に間違った結論を与えた奴らだった。




「で、では、過去裁判を開廷します」

誰もが注目する過去裁判が開かれた。
なにせ人数は過去最大で傍聴席にすら被告があふれている。

「えぇーー……つまり、原告は
 ネットで間違った支持を与えた人間を訴えたいと?」

「はい、結論を出したのは僕ですが
 その黒幕は有罪を支持した人間全員です」

「それでこんな数になったのか……」

裁判所は怒号とヤジが飛び交うカオスな状況。

「では、被告人たちからの弁解をどうぞ」

被告人たちは一斉に謝ったり逆ギレを始めた。
混ざりあいすぎて一人一人が何言っているのか
裁判長にも聞き分けることができない。

それでも、主人公を悩ませるには十分だった。

「こ、こんなに反対されるなんて……。
 もしかして僕は間違っているのかな……」

判決を出す主人公が悩みだしたのを見て、
被告人たちはいっせいに彼の性格を把握した。

「あいつ自分じゃ何も決められないんじゃないか」
「俺たちで無罪を支持すれば……」
「間違いなく周りの意見に流される!」

被告人たちの中で一番口が達者な奴が弁護で時間をかせぎ、
その間にほかの被告人たちはいっせいにネットへ投稿。



無罪:9.99999999999%
有罪:0.00000000001%



「完璧だ!! これなら大丈夫だ!」
「支持待ち人間の主人公なら流されるな!」

被告人はすっかり安心して行方を見守った。
予想通り、主人公は自分で判断できなくなったのか
カバンからケータイをあさり始めた。

この先の展開は決まっている。
支持率を見て自分の判断のミスに気付いて……。


「あ、ケータイ壊されたんだった」

瞬間、被告人全員の顔が青ざめた。


「それで、有罪か無罪かどっちにするんですか?」

「じゃ有罪で」

主人公は特に考えないで結論を出した。