想像を超えない赤ちゃん
親はわが子の顔を見てうっとりと言った。
他の人から見れば、そう特別可愛いいわけでもない。
翌日、赤ちゃんは生後1日にして歩き始めた。
「まあ! うちの子ったらなんて天才なのかしら!」
よちよち歩く赤ちゃんを親は抱きしめる。
「ああやっぱりうちの子が一番かわいいわ。
おぼつかない足取りなのがさらに可愛いわ!」
それまで親バカと切り捨てた人たちも、
たしかにその赤ちゃんが可愛く見えてきた。
翌日、赤ちゃんは生後2日にして
顔のベースがほぼ完成されアイドル顔になった。
「まあ! うちの子がどんどん可愛くなるわ!」
今や病院内でその赤ちゃんはアイドル的な存在になり、
寝たきりのおばあちゃんが這いずりながら見に来るほど。
「この子には特別な才能があるに違いないわ!
本当に可愛いんだからぁ!」
親は嬉しさと愛らしさでまたわが子を抱きしめた。
翌日、赤ちゃんは生後3日にして
言葉を話し複雑な勉強をあっさりとこなすようになった。
「お母様、私はこの世界を憂いております。
もっと人と人とがコンプライアンスしていけば……」
「なにこれ可愛くない」
親は迷わずわが子をぶっ叩いた。
すると、それまでの聡明な顔つきが一気に失われた。
「だあ、だあ。ぶーぶー。まんま、まんま」
「ああ、本当にうちの子ったら可愛いのね!」
親はわが子を抱きしめた。
「やっぱり、私の想像を超えないくらいが一番かわいいわ!」
作品名:想像を超えない赤ちゃん 作家名:かなりえずき