すてきなあなたに憧れて(最新)
近頃は作為的に作られた三連休が多くなりました。
休みの分、仕事が押しつまるのでかないません。
その反面、休日前には切符も取っていないのにどこへ行ってみようかなとわくわくします。
結局無為な休日を過ごすことが多いのですが、それでもたまに本当に旅に出ることもあります。
先日東京の友人に会うために一泊二日で上京しました。
私も含めた日本の大部分の人にとって、東京は、仕事場ではなく大観光地なのです。
一泊二日とは言えどこへ行こうか、何を見ようか、何を食べようか…夢は膨らむばかりです。
これぞ旅の醍醐味と言えるでしょう。
でも今回は違いました。
私の最大の愉しみは「グリーン車」。
まさかの移動手段です。
実は、人生で初めて東海道新幹線のグリーン車に乗る機会を得たのです。
今どきはポイントをためたりネットや金券ショップを利用したり、様々な手段で切符を安く手に入れることができます。
私はこのような「お得情報」には基本的に興味が無く、むしろ「探したり調べるのが面倒」と思うタイプです。
ですからこのような情報に出くわしてもうまく活用することができません。
それが何の偶然か、「この料金を追加すればグリーン車席を指定することもできます」という文章に反応したのです。
それは何と、通常料金の半額程度でグリーン車に変更できるサービスでした。
もちろん、注文した後で気付いたのですが…。
そんな訳で長年の憧れだったグリーン車に乗ることができました。
指定したのは東京からの帰路で乗る便だったので、一泊二日の旅の間中、「帰りはグリーン車」で頭がいっぱいという始末。
電車好きの子どもと同じ思考回路です。
せっかくなので駅弁も奮発し、「伊達の牛たん弁当」なるものを購入しました。
私の脳内イメージは「グリーン車=大人=牛たん」。
売っている場所の名前が「グランスタ」というのも大人っぽくて良かったのです。
お土産も購入したし、準備万端で新幹線に乗り込みます。
通常の指定席や自由席に比べて車内は空いており、その時点で贅沢な気持ちになります。
シートも広く、フットレストにも感動。
ゆったりと腰かけ、足を伸ばしながら過ごせるのです。
ゆったりと、牛たん弁当を頂きました。
感激のおいしさであったことは言うまでもありません。
何しろ、大人の味なのですから。
(本当は少し、唐辛子の辛さに泣きました。)
新幹線が動き出してすぐ、「グリーン車を担当致しますパーサー」なる人に出会うことができました。
おしぼりを持ってきてくれたのでした。
新幹線でおしぼりを持ってきてもらえるなんて知らなかったので驚きました。
ちなみにこのパーサーさんは検札と車中で出たゴミの回収もしてくれます。
お弁当が終われば読書です。
グリーン車は本当に静かな空間なのです。
子どもたちも乗っているのに、なぜこんなに静かなのか…それは乗っている人皆が、この雰囲気を大切にしているからなのだと思います。
グリーン車の最大の良さは、施設設備や人員配置ではなく、このゆったりとした「空気」なんだなと感動することができました。
快適な時間は瞬く間に過ぎ、いつもよりも早く降車駅に着いたのでした。
手洗いもきれいだったし、予想以上のグリーン車空間にときめいた旅の終わりでした。
作品名:すてきなあなたに憧れて(最新) 作家名:さかいあきこ