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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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親切を受け止められる?

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上京してもう3年になる。
都会の人の冷たさには本当に嫌気がさす。

「こないだおごってやっただろ? だから……」
「ほら、前に女の子紹介してやったじゃん。だから……」
「お前の仕事代わりにやったことあっただろ。だから……」


「「「 金、貸してくれるよな? 」」」

こいつら全員、金を返す意思がないことくらいわかる。
どうせ何かと理由をつけてごまかすつもりだろう。

後で見返りを求める親切なら、最初からいらない。

本当に都会の人の心は腐っている。
どいつもこいつも心から親切な奴なんていないんだ。


「金でしたら、僕が払いますよ」

「同僚……!」

俺と同じ地方出身の同僚が立て替えて事なきを得た。

「ありがとう、本当に助かったよ」

「いいんだよ。困ったときはお互い様だろ?」

久しぶりに触れた人の優しさに涙が出た。
いかに自分が「親切」に飢えていたかを思い知った。

※ ※ ※

「みなさま、『親切村1日体験ツアー』にようこそ。
 もうすぐバスの右側の窓から親切村が見えてきます」

シルバーウィークの長期休暇を使ってツアーに参加した。
親切村。
誰もが世界で一番親切な村らしい。

「ようこそおいでくださいました。
 これは村でとれた野菜です、お納めください」

バスを降りるとすぐに村人から野菜をもらった。

「いいんですか? お代は……」

「いりません、いりません。ここは親切村。
 みな、誰もが親切をしたいだけなんですよ」

村人にあえばみんなもれなく親切にしてくれる。
すぐに俺の両手は荷物であふれかえった。

なんて良い村なんだろう。
ここに一生住めたらいいのに。

「みなさーーん。そろそろ帰りのバスが出ますよーー。
 ツアーに参加しているみなさんはバスに乗ってくださーーい」

バスが発車すると、ガイドは人数確認をはじめた。

「ひい、ふう……あれ? 一人足りない……?」

 ・
 ・
 ・

バスが小さくなるのを確認して、村をさらに進んだ。
この親切村はみんな親切だからなんでももらえる。

自分の金を使わずに一生暮らしていけるに違いない。

「あら、見ない顔ですね。
 はじめまして、これはほんの挨拶です」

村人は新顔を警戒することなく物を恵んでくれる。
渡された封筒を開くと中から札束が出てきた。

「えっ!? なんでっ……!?」

「新生活はお金がかかりますから、使って下さい」

「こんなに受け取れませんよ!?」

「いえいえ、これはただの厚意ですから」

俺は押し切られる形で札束を受け取った。
後でなんかヤバイ取引でもあるのかとびくびくしていたが、
村人は再びやってくることはなかった。

「……本当に、ただの厚意だったのか?」

いくら親切村といっても、これは異常すぎる。
見ず知らずの人に大金を渡すなんて……。

きっと裏があるに違いない。


俺は金を渡した村人を探し当てた。

「おいあんた! この金、どういうつもりだ!」

「どういうつもり……もしかして足りませんでしたか?」

村人はさらに倍の札束を差し出す。
お金持ちが渡すような嫌味っぽくない、
転んだ人に手を差し伸べるくらいの自然さで。

それがかえって恐ろしかった。

「この金で俺を買収するつもりか!?」
「めっそうもない!」

「同価値の品物を後で要求するつもりだろ!?」
「そんなまさか!」

「俺の家に勝手に住み着くとか……そんなだろう!」
「そんなことする意味がありません!」

なにを言っても村人は否定した。
本当にただの親切なのだろうか。

「なにも見返りを求めない親切こそが本当の親切です。
 私どもは本当の親切しかしないんですよ」

「う、うそだ……!」

俺はわけがわからなくなって、村人の家に入り、家財を壊した。
高そうなツボを割り、大事そうな孫の絵を引き裂く。

「さあ、もう俺を許せないだろ!!
 早く化けの皮をはがして真実の姿を見せてみろ!
 本当は金を渡して俺をどうしたかったんだ!!」


「家を壊したこと、物を壊したこともかまいませんよ。
 もし、金額が足りなければもっと差し上げますよ?」

「どういうつもりだよ……。
 どうして、どうして俺を許したうえに、さらに……」

「見返りを求めないのが親切ですから」

笑顔を崩さない村人の顔を見て、
俺は頭がおかしくなりそうだった。








「みなさま、『親切村1日体験ツアー』お疲れさまでした。
 当バスはこのまま都会へと引き返し……あれ?」

それからしばらくしてやってきたツアーバス。
俺はそこに紛れて乗り込むことができた。

「あの、あなた……今回の参加者でいました?」

「頼む! あの村にはおいていかないでくれ!
 みんなの親切が怖いんだ! 頼む!!」

「え、でも……別に村人からなにかされたわけじゃないんでしょう?」

「暴力も、変な取引も、なにもされなかった!
 親切されっぱなしだっただけだ!」

「だったら……」
「頼む! あの村にはおいてかないでくれっ!」

ガイドに涙ながらに訴える。
次のツアーバスが来るのをどれだけ待ったことか。

必死な訴えが通じてガイドは俺をつまみ出すことなく都会へ戻った。



都会へ戻るとすぐに、同僚がやってきた。

「連絡取れないから探したよ、どこへ行ってたんだ?」

「ああ、ちょっとな……」

同僚は俺の機嫌が悪くないことを声色で読み取り、
かねてから考えていたであろう要求を突きつけた。


「なあ、1週間お前の部屋で俺をかくまってくれ。
 実は借金しちゃって追われてるんだ。
 前に金で助けてやっただろ? だから……いいだろ?」

同僚はニヤニヤしながら俺の前に手を合わせた。
その様子を見て、俺は本当に嬉しくなった。


「ああ、やっぱり……! それでこそ親切だよな!」


やっぱり親切には見返りを求められなくちゃ。
本当の親切を受け止められる人間なんているのだろうか?