ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮)
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一方、市花が死ぬ気で敵と戦闘していた頃、別の場所で樹音・ヒサカタは戦っていた。というか、逃げ回っていたのだった。
「はぁはぁはぁな、何で?何で私なんですか!私なんて不釣り合いです!一般人ですよ!軍人学校の学生さんじゃないんですよ!!は、張り合いないですよ!!はぁはぁ…」
姿の見えない敵が樹音の背後からライフルで撃ってくる。留まるところをしらない。しかも樹海のそうとう奥まで入っているのか腕時計が止まっていて正確な時間が判らないという一般人には泣きたいほど危機的状況だ。知らない人がみたら100%樹音は自殺志願者に間違われるだろう。
だがここでは間違う者はいない。敵は後ろに居るというのは分かっているが姿が見えないのが樹音にとって余計な不安になっていた。チラチラと自分の背後を見ながら走る樹音。その為、足元の罠には気付かなかった。
「えっ!?」
何か細い紐のようなものが樹音の右足に引っ掛かる。そして何とかバランスを取ろうとして左足に力を込めて地面についた瞬間だった。
(ズシ…)
「*☆△×●□…!!!!!」
樹音は声にならない声を叫び、そして落とし穴に落ちたのだった。
樹音を狙っていた敵は樹音が落ちたのを見計らい姿を現した。そして落とし穴の中を覗くと中は真っ暗な底が見えない程の空洞だった。樹音の叫び声ですら響かない、落ちれば終わりと言われる自然が作り出した落とし穴だったのだ。敵はニヤリと笑うとその場を離れた。
作品名:ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮) 作家名:鳶織市