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2番目

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人間、ついつい2番目を選択してしまうらしい、という話を聞いた。
これには人間心理上の様々な動きが関与しているらしいのだが、私が聞いたのは以下のような話である。

例えばあなたはとある町内美人コンテストの審査員を務めることになったとしよう。「いやいや、町内会の付き合いでしかたなく、ね?」とか奥さんに言い訳たれながらでも頬をゆるませ審査に臨むわけである。そしていざ。一番かわいいのは佐藤さんだ!と思ったとする。
ところがここで、このような心理が生まれるのだ。「いやまてよ。佐藤さんは可愛いけど、これにはおそらく俺の個人的嗜好が多分に含まれているはずだ。だってあの子は髪がポニーテールだし、着ている水着は白のセパレートだし。これは俺の直球ストライクだけど、でも一般的な美人を選ぶ必要があるんだよな。そうだな、みんな好きそうなのは・・・隣の西園寺さんかな?」
こうして見事、西園寺さんはそこまで可愛くないのにミスコン優勝者となるのである。

こんな例もある。あなたはいきつけの定食屋に行ったとする。すると、新メニューが二品、追加されているではないか。片方は牛しゃぶ鍋定食、片方は筑前煮定食である。迷わず牛しゃぶ鍋定食が食べたいと思ったとする。ところがここで、このような心理が生まれるのだ。「いやまてよ。牛しゃぶ鍋定食のほうがおいしそうだけど、新メニューだからなぁ。‘はずれ‘な可能性もあるよな~。ここまで牛しゃぶ鍋定食に期待しといて、はずれたらショック大きいよな。ならば、期待が小さい分はずれてもいい筑前煮にしようか」
こうして筑前煮定食はそう美味しくないのにバカ売れし、レギュラーメニューの地位を獲得するのである。

このように、どうも人には2番目を選択してしまう傾向があるらしい。1番目を選ぶという行為には、1番目特有の「大きな期待」があるゆえに、「期待おおはずれ」というリスクを背負わなければならない。
これにはある種の勇気が必要であり、英断であり、人はそれを避ける傾向にある、という言い方をすると包括的だろうか。

と、いうことは。いま私の周りをいちゃいちゃしながら実に目障りな感じで夏祭りを楽しんでるカポーさまたち。もしかしてパートナーのセレクションは、お互い二番目同士なのでは。

「わぁ、タカシ!見て、おっきぃ!きれいな花火~!(はぁ、陽介。いまどうしてるの?)」
「ほんとだね。でも和菜、君の瞳のほうがもっときれいさ(亮子のほうが、さらにきれいだったけど)。」
「タカシ・・・(陽介・・・。)」
「和菜・・・(亮子、俺は・・・!)」
腹立つ会話も脳内補完され、ずいぶんマシになったものだ。

ここで不幸なのは一番目である。二番目の地位に立つことが出来なかったがために、扱いは三番目以降と同じである。陽介くんは和菜ちゃんにとって一番であったにもかかわらず、そのことにも気付かないまま、自分の魅力を自覚することもなく、三番目の孝之とともに居酒屋でクダを巻いていることだろう。
そう。外観的な現象のみを観察した場合、「一番目」と「三番目以降」になんら変わりはないのだ。一番目は、でも一番目としての自覚がないまま三番目と同じ扱いを受け、そして三番目と同じように卑屈になっていくわけである。

以上のことから、次のことが言える。すなわち、世の中で【勝ち組】とされるのは「一番目」でなく「二番目」である。そして【負け組】は主に「一番目」と「三番目以降」から構成される。さらに【負け組】の人間は、その主観としての特徴から、自分が果たして「一番目」だったのか「三番目以降」だったのか、自分では観測することが出来ないということになる。

ということは、ちょっとまてよ。私はいままでの人生において、ずっと「三番目以降」だと思っていたのだけども。もしかして中学生のときの志保ちゃんも、高校生のときの秋菜ちゃんと智子ちゃんも、大学生のときの理恵ちゃん、祥子ちゃんも。みんなみんな「私」が「一番目」だったのではないか?でも勇気が出せず、みんな「二番目」とくっついてしまったのではないか!?秘めた思いを胸に抱きながら、でもそれを表現することないまま、私の元を去って行ってしまったのではないか?

「えぬむら君の・・・、鈍感っ!」そうか!みんな私が大好きだったんだな!?俺ってば実は、すごくモテてたんだな!?もっともっと君たちの愛に、気付いてあげるべきだった!いまからでも遅くない、みんな!俺と一緒にアツい抱擁を交わそうじゃないか!?ふおぉぉおおおぉぅう!

・・。さて。いつものメシ屋で牛しゃぶ定食でも食べて帰ろうか。いやまてよ、ここは筑前煮でいってみよっかな。
作品名:2番目 作家名:えぬむら