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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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どれが甘いか、美味しいか…。

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二ヶ月ぶりにお母さんの家に帰った。
お母さんが、
『スイカがもの凄く上手に出来たの~。あっ、そうだ、今から一つ食べてみようか?!ちょっと一緒に畑に来て、どれが食べ頃かスイカに聞いてくれない。』
と言うので、私も畑に付いて行った。
付いて行きながら、どんな使われようだよ!!と思いながら、お母さんの後ろを歩いて行った。

お母さんが、
『見て見て、上手でしょ~。どれが食べ頃かなぁ~。』
と言いながらニコニコしてスイカを見ていた。
私はジーっと十数個あるスイカたちを順番に見ていた。
すると真ん中ら辺のスイカが声をかけて来た。
『あいちゃ~ん(仮名;私)、ここ、ここ~。…ん~、この中だったら~…、自分が一番食べ頃かなぁ~。』
その言葉をそのままお母さんに伝えると、
『お~、良いとこ言うねぇ~。それも最初の方に出来たスイカで、こっちも同じくらいに出来たスイカ。どれが良いか…。』
と言う。
私が、
『お母さんが良いと思うのがあるならそれでも良いんじゃないの?!』
と私が口を挟むと、最初に喋ったスイカが、
『お母さんが選んだのでも良いし…、自分でも良いし…。』
と喋っていたら、二メートルほど離れた所のスイカが、
『少し早いけど、自分でも良いよ~。』
と言い始めた。
そうしたら、その他のスイカも言い出して、全部で四つのスイカが、“自分でも良いよ~。”と言い出した。
それを聞いたお母さんは逆に困りだして、考え始めた。
そこまで考えることはないのに…。
何か他に方法はないかと考えた私は、
『じゃあ、間を取って、叩いて音を聞いてみるっていうのはどう?!この四つの中から叩いてみて…。』
と提案した。
お母さんは納得したようで、叩き始めた。
先ずは一つ目。
ポンポンと音がした。
叩かれたスイカがクスクスと笑う。
楽しいのかなぁ~。
比較対象がないと何とも言えない…。
二つ目を叩いた。
やっぱり叩かれて嬉しそう。
どのスイカだろうか、
『ポンポン。』
と音のマネをしていた。
本当にただそこにいるだけなのに、幸せなんだなぁ~と感じていた。
音マネをするスイカに私も、“ポンポン。”と返した。
それもまた嬉しそうに笑うと、また、“ポンポン。”と誰かが言った。
これって、“平和”って言うのだろうか…なんて思った。
二つ目のスイカは一つ目よりも音が低い。
お母さんと目配せして肯き、
『二つ目の方が低かった。』
とお母さんは言った。
同じことを全部で繰り返し、その中の二つに絞った。
お母さんが何度もその両方を叩いて音比べをした。
『よしっ、こっちにしよう。これでいいねっ?!』
と私に聞いて来た。
『お母さんが作ったんだから、お母さんがこれって思うので良いよ。スイカも文句言うわけじゃないし…。“少し早いけど、美味しいよ~。”って言ってる…。』
お母さんは肯き、持って来たハサミでスイカのツルを切った。
それは最初に、“自分が一番食べ頃かなぁ~。”と言ったスイカだった。
切られたスイカがクスクス笑いながら、
『“少し早いけど、美味しいよ~。…あっ、でも種はまだ真っ白~。でも美味しいよ~。”だって。』
と伝えた。
お母さんは採ったスイカを見ながらヨシヨシしていた。
『少し早くてもいい。どんな出来かを早く見たい。』
そう言って、キッチンへと向かった。

お母さんがスイカを洗い、いざ包丁を構えた。
なかなかお母さんは切らない、
『行くよ、行くよ、良い?!もう切ってしまうよ。』
と行くに行かない。
『もう、ツルまで切ったんだから…。』
私が呆れて言っていたら、言い終わる前にスパッと切りやがった。
さっきの躊躇は何だったんだよ!!と思った私は、
『結局、躊躇せんのかいっ!!』
と突っ込んだ。
『ついに切ってしまった~。』
とお母さんはヘタを切ってそう言った。
躊躇は終わって今度は動揺かよと思ったけど言わずに、その代わり私は黙った。
そしてお尻の方を切って、いざ真っ二つへ!!
『行くよ、行くよ。』
とお母さんは言いながら包丁を入れた。
桃太郎の桃のようにパカッと二つに割れた。
中は綺麗な真っ赤っ赤だった。
『凄~い!!ちゃんと真っ赤っ赤~。良い出来~。』
私はそう言いながら拍手していた。
お母さんも感動して、
『嬉しい~。』
と声をあげた。
食べやすい大きさに切って、お皿に乗せた。
お母さんが、
『食べてみて。』
と言うから、
『お母さんが初めて作った、初めてのスイカなんだから、お母さんが最初に食べて。』
と私は言った。
お母さんは肯き、一口目をパクッと食べた。
目を見開いたお母さんは、
『美味しい~。ちゃんと甘~い。』
と感激して二口目、三口目とすすめた。
お母さんが私に食べてとすすめたので、
『お母さんのスイカ、しかも初の初物…、いただきます。』
手を合わせ私も食べた。
『ちょっと早いけど、しっかりと甘い…。ちゃんとスイカだ~。初めてでここまでよく出来た!!偉いっ!!』
と私は褒めた。
お母さんは嬉しそうに、
『お母さん、育てるの上手かも…。』
と言い始めた。
そんなこと言うから、上(神様)が出て来た。
『お母さん、スイカたちも頑張ったんじゃないのですか。まだまだスイカたちも頑張ってますよ。』
その言葉をお母さんに伝えたら、ハッとしたお母さんは畑に向かって、
『美味しいです。ありがとうございます。まだ頑張ってください。』
と大きな声で伝えた。
『畑から、“は~い、まだ頑張りま~す。”だって。』
私も聞こえた声を伝えた。
スイカを食べながらふと思い出した。
スイカが、“種はまだ真っ白~。”と言っていたのを…。
お皿に盛られたスイカを見てみた。
『お母さん、“種はまだ真っ白~。”って言ってたけど、見てよ…。種、全部真っ白で黒が一つもない…。本当だったね…。少し早いって言ってたの合ってたね。』
お母さんもスイカを見ながら、
『あら、本当。次はいつくらいが良いって言ってる?!』
と聞いて来た。
私はスイカに耳を傾けて声を聞いた。
『“ん~…、物によるけど、二週間くらいしたら良いかも~。”だって。』
お母さんは肯きながら、
『二週間かぁ~。うんうん、分かった。』
と言った。
『しばらくして、またポンポン叩いたらいいんじゃないの?!』
と私はスイカを食べながら言った。
その時はまたスイカも、“ポンポン。”と音マネをして喜ぶんだろうなぁ~なんて思いながら…。