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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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フィギュア嫁はモラハラ中

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「汝は良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
 病める時も健やかなる時も、
 共に歩み、死が二人を分かつまで愛を誓いますか?」

「誓います」

誓ったのは新郎だけだったが、神父は式を進めた。

「では、二人は正式に夫婦となることを神のもとに認めます」

かくして、人間とフィギュアの結婚式は幕を閉じた。
人間以外との結婚が許可されてから、
身長15cmの嫁なんて珍しくもない時代になっていた。

※ ※ ※

そのころ、フィギュア製作を請け負っている会社に手紙が届いた。

"先日、そちらの
『萌え萌えウォーズ
 銀守 美鈴 バニーstyle
 (1/7スケール 塗装済み完成品フィギュア)』
 と結婚しました。
 結婚生活1ヶ月なんですが、ずっとこの服装なので
 一緒に生活している感じがしません。なんとかなりませんか?"


「なんとか、か……どうする?」

「服のバリエーション増やすだけなら楽だろ。
 問題は相手がいくらお金を用意しているかだ」

「手紙には金はいくらでも払うって書いているぞ」

「まあ、相手にとっちゃ嫁だからな」

そこで手紙を送った人の家まで行って、
フィギュア嫁にいくらか服のバリエーションを用意してあげた。
できるだけ生活感が残るようなものを。

「ありがとうございます! ありがとうございます!!」

依頼主はたいそう喜んでいたうえ、
金もこちらが想定した以上に払ってくれたので悪い気はしなかった。


それから数日後、また同じ依頼主から手紙が届いた。

"うちのフィギュア嫁ですが、
 1/7スケールではどうにも一緒に暮らしている感じがしません。
 どうにか1/1スケールにすることはできませんか?"

「うーん、簡単ではないよな」
「でもやってあげようぜ。またいい金額払ってくれるよ」

再び同じ依頼主のところに行って、
縮尺を本来の1/1サイズにすると、依頼主は喜んでくれた。



また数日後に手紙が届いた。

"こんなにも愛し合っているのに
 二人の子供がいないのは不自然です。
 僕らの子供を授けてください。男1人、女1人がいいです"


「フィギュアだから子供できるわけないだろ!! あほか!!」

「どうする? 子供のフィギュア用意するのは手間だぞ」

いつも依頼主のところに言っていたフィギュア技師は、
この対応で時間を取られていることにイライラしていた。

ただ、社長としてはおいしい客なので逃したくはない。

「なあ、頼むからやってくれないか?
 せっかくこっちの腕を信頼してくれているんだし……」

「ああ、わかった! わかったよ!!
 だけどこれが最後だからな! 絶対だからな!!」

なかばヤケになりながらも技師は依頼主の家に向かった。

またごちゃごちゃオプション追加を言ってくるのを想定し、
先回りして人工知能をフィギュアに内蔵し、
成長とともに体回りのサイズも大きくなるよう手を加えた。

これならもはやフィギュアどころか人間と言える。

「これでもう人間に近づけろって依頼はこないだろ!」

技師は安心して帰って行った。
これでもう安心して別の仕事に取り組める。

はずだったが、また手紙が届いた。


"先日用意していタだいた男児のフィギュア。
 成長プログラムに欠陥があったヨうで、
 もう大人になってしまいました。
 成長を固定するためにフィギュアに戻せませんか"


「もう嫌だ!! 絶対やらないからな!!」

いつも担当していた技師は完全にそっぽを向いた。
よかれと思ってつけた機能なのに、「やっぱりやめて」が許せなかった。

幸い、そこまで専門性の高くない作業なので
社長は今回だけはじめての技師を送ることにした。

しばらくして、技師はちゃんと仕事を終えて帰ってきた。

「いや、簡単な作業でした。
 ちゃんとフィギュアにしてきましたよ」

「ちゃんと金は払ってもらえたんだろうな」

「ええ、もちろん。
 きれいな嫁さんが払ってくれましたよ」

「ならよかった」

社長は安心した。


また数日がすると、会社にフィギュアと手紙が送られてきた。

"もう古くなったノで廃棄をお願いします"

送られてきたフィギュアはぼこぼこになって、
傷だらけだったのでリサイクルはせずに
そのまま廃棄ボックスへと送られた。

そこに、いつも担当してたベテラン技師が通りかかった。

「あれから手紙は?」

「もう来てませんよ。平和なもんです」

「それはよかった。正直、あの依頼主ニガテだったんだ。
 俺が作ったフィギュアに毎日セクハラしていたからな」

「それ、技師特有の愛情だな。ははは」

技師がふと廃品ボックスをのぞくと、
捨てられたフィギュアを見て顔をしかめた。


「おい。いつこんな悪趣味なフィギュア作ったんだ?」


廃品ボックスには、フィギュア化されている依頼主が捨ててあった。