人類でもっとも頭がいい人
何度見てもこのシーンでは胸がおどる。
特にパーツ分裂時の関節可動域の限界性を感じさせつつも
ダンガルの重厚感を損なわない演出はまさに監督の神の采配とも…
「たかし!
あんたまたアニメばかり見て!!
いい加減仕事でも探しに行きなさい!!」
「仕事なんか行くよりもずっと大事なことがある!」
「それがその見飽きたアニメを見てネットするだけかぃ!
あんたみたいなごくつぶし、生きている価値ないよ!」
「ダンガルは人間の根幹が描かれている!
聖書を読むのと同じだ! 見続けてなにが悪い!」
母親とのいつもの口論がまたはじまる。
でも、今日だけはすぐに切り上げることになった。
つけっぱなしのテレビから、宇宙人が現れたからである。
『人類のみなさんこんにちは。
これから人類を滅ぼすかどうかの判断をします。
つきましては、人類の有効性について知恵比べをしましょう』
モニターの中での宇宙人はニコニコ笑いながら
口から出てくる言葉はどれも凶悪で支配的。
これが冗談じゃないことがよくわかる。
『ただし、チャンスは3回。
3回、私との知恵比べに負けた場合
人類は現存する価値ナシとして即絶滅させます』
俺が得意のネットで検索すると、
宇宙人はすでに人類の平気のたぐいを先につぶしてしまった。
もう人類を救う方法は知恵比べしかなくなった。
世界は、この地球上でもっとも偏差値の高い人間を送り込んだ。
宇宙人は宇宙から問題を出し、その模様を全世界で配信されている。
「‰+ρ×Ξ=?」
「3です」
「∀×∇+∞=?」
「2です」
おお、と思わず声が出た。
さすが世界最高の偏差値を持つ人間。
問題の意味はいっこもわからないけど、
宇宙人の質問によどみなく答えていく。
「では、最後の質問です。
1,2,6,24,120,?? ?に入る数字は?」
「えっ……」
偏差値人間は一気に黙ってしまった。
規則性があるようだけど見つけられない。
悩んでいるうちに、頭に血が上りすぎて倒れてしまった。
「1回目の知恵比べは私の勝ちです。
さあ、人間のみなさん残りは2回です」
「僕にまかせてください」
今度出てきたのは世界でもっともIQが高い人間。
「ちなみに、さっきの答えは720ですね。
1、2、3、4…を順番に前の数字にかけている」
IQ人間はさらりと答えてしまう。
偏差値人間でできなかった柔軟な答えを出せる。
これは期待できるんじゃないか。
「いいだろう、では2度目の挑戦を受けましょう」
IQ人間は宇宙人の答えにすらすら答えていく。
あっという間に最後の問題へとたどり着く。
「では最後の問題です。
ソーセージとウインナーの違いは?」
「うえぇ!?」
ここで一気に問題の毛色が頭を使うものから、
単純な知識を求める問題へと変わった。
「ぶー。時間切れです。
ソーセージはカテゴリーの名前で
ウインナーは一部のソーセージの商品名です」
「わかるかぁ!」
IQ人間はその頭の良さからものを知らなくても
自分の手持ちの知識だけでいくらでも工夫して乗り切れた。
その特性がここではあだとなった。
「2回目の知恵比べも人間の負けです。
3回目は……もうやらなくていいですね。
これ以上頭のいい人間はこの世界にいないでしょうし」
そこに俺がやってきた。
「あなたが3回目の挑戦者ですね。
IQも偏差値もさっきの人間よりずっと劣る」
「でも、一番頭がいい」
俺の言葉に宇宙人は首をかしげるが、
人類の命運をかけた最後のテストが開始される。
「●△×■=?」
宇宙人の問題が出ると、それをすぐにネットで検索。
「9です!」
「正解」
「1,8,2,7,3,6,4,?? ?に入る数字は?」
全然わからないけどネットで検索してみる。
「…7です!
上から順に-7,-6,-5されています!」
「正解」
「缶詰をはじめて開発した人は?」
「ナポレオン」
「正解!」
質問の意味が分からないものばかりだけど、
ネットであればどんな答えもたちまち出せる。
「では最後の問題です」
ごくり。
この一問で人類の命運が決する。
「アニメ『軌道戦士ダンガル』の第24話にて、
ダンガルの換装シーンの作画を担当した監督はだれ?」
「太田 守 監督!!」
間違いない!
第24話は何度も見直したし、
エンディングのスタッフロールも見逃さない。
ネットで調べるまでもない!!
「どうだ! 間違いない!!」
宇宙人の答えは……。
「えーー、でもwikipadiaには
官崎 駿 監督って書いてあるので、間違いですね」
人類は滅亡した。
作品名:人類でもっとも頭がいい人 作家名:かなりえずき