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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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あなたは主人公になれますか?

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主人公選抜試験A会場。
受験生の主人公候補生たちはそれぞれの席についた。

筆記用具を出したり、試験開始ぎりぎりまで参考書を開くはずが
受験生の目は一転にくぎ付けにされた。

「あれ誰だ?」
「受験生じゃないよな」
「なにしてるんだろ」

会場の隅にはきれいな同年代の女が立っている。
なにをするでもなく棒立ちで。

しばらくすると、試験官がテスト用紙をもってやってきた。

「では、第1次試験の筆記試験を始めます」

女の試験官はきっちりとスーツを着こなし
いかにも仕事ができるビジネスウーマンの雰囲気を漂わせる。

試験官は立っている部外者を完全に無視。
受験生はペンをもって筆記試験をはじめた。


問1 川でおぼれている男の子がいる。どうしますか?
答え すぐに飛び込んで助ける

問2 仲間が敵に連れ去られた。どうしますか?
答え 仲間を集めて助けにいく

問3 バトルで追い詰めら



「やっべぇ~~超わかねんぇ~~」

受験生で一番ちゃらい男が声を上げた。
受験生はわかりやすく不快そうにしてから黙殺し試験を続ける。

「それまで!!」

試験官は用紙を回収し、その場で採点していく。

「よし、筆記試験は全員合格だな。
 では全員で第2次試験は実技試験をはじめる」

受験者はさっきのチャラ男が通ったのかと驚いたが、
次の実技試験にそなえて気持ちを切り替える。


「では、この中で好きな武器を選びなさい」

試験官は受験生の前にさまざまな武器を出した。
受験生は迷わずに「剣」を選んで手に取る。

「えっ、みんなそれ選ぶの? じゃあ俺も」

チャラ男も周りに合わせて剣を選ぶ。


「よし、合格。では次にあなたの特殊能力を披露してください」


受験生は各々持っている特殊能力を披露していく。
どの能力も個性的で特徴的な中、

「えーと、俺の特殊能力は女子にモテることッス」

とだけ言って発表を終えたチャラ男には全員驚いた。


「よし、2次試験は全員合格」

それに合格させた試験官にも驚いた。


「では、最終試験だ。
 最終試験は受験生だけでの試験となる」

受験生だけの試験……?
どの受験生もその言葉の意味を理解できない。


「最終試験は、この中で一番
 "主人公にふさわしくない人"を決めること」

それだけ言うと試験官は制限時間をセットし教室を後にした。
取り残された受験生たちは顔を見合わせる。

「ふさわしくない人を決めろだって……?」
「決めたら不合格になるんだろうか」
「それをどうして俺たちに?」

不安が行きかう中、チャラ男だけは席を立って部外者の女のところへ。

「君カワウィーね、受験生? どこに住んでるの? いくつ?」
「…………」

女は一言も答えないが、チャラ男はひたすら口説いている。




「……あいつじゃないか」

ひとりの受験生はアゴでチャラ男を示した。

「どう考えてもこの中で
 主人公候補としてふさわしくないのはあいつだろ」

「ふざけるな! 俺たちは主人公なんだぞ!!
 同じ試験を受けた仲間を売ることなんてできない!!」

もう一人の受験生は徹底して反対。
なにせこの教室の様子もカメラで中継されている。

最終試験はこの立ち振る舞いすべてを隠れて評価されているに違いなかった。

「ふんっ……主人公らしい答えじゃないか。
 だが、ここで取るべきなのはもっとも人を救える方法だと思うが?」

別の受験生はダークヒーローのような答えを出す。

「えっ? なんだって?」

別の受験生はライトノベルの主人公らしい答えを。

それぞれがここにいない試験官に対してアピール合戦をしたところで、
終了時間が近づいてくると、なんらかの答えを出さなくちゃいけない危機感が迫ってくる。

"結局なにも決まりませんでした"

では主人公としての適性に欠くことくらい、
まだ主人公になりきれていない候補性でもわかることだった。


「……やっぱりあいつだよな」
「だな」
「決まりだな」

全員の視線がいまだに口説き続けているチャラ男に注がれた。



じりりりりっ!!


試験終了のアラームとともに試験官が戻ってきた。
受験生たちの出した答えを聞く前に、試験官が口を開く。

「試験終了。では、合格者1名を発表する」

受験生はごくりと唾をのんだ。


「合格者はチャラ男!! おめでとう、君が主人公だ!!」


「「「 えええええ!? 」」」

思わず候補生どまりの受験生は立ち上がった。

「だってあいつ、なんの答えも出してませんよ!?」
「それに試験にも真面目に参加してません!」
「あいつのどこが向いているっていうんですか!」



「この中で、ヒロインと関わったのはチャラ男だけだ。
 ヒロインができない人間など主人公になれない」

落ちた候補生たちはがっくりと肩を落とした。



「え、それ試験官を口説いてほしいってことッスか?」

そして、唯一の合格者もこの発言で落第が決まった。