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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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座敷童 人質たてこもり事件

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犯人が人質をとってもう24時間が流れた。

「おらーー! 早く逃走用の車を用意しろ!!
 これ以上待たせたらどうなるかわかってるんだろうな!?」

だんだん犯人もイライラしてなにをしでかすかわからない。

「リーダー、どうしますか」

「人質の安全が第一だ。
 ここで逃走用の車を用意してみろ。
 犯人はまんまと逃げおおせてしまう」

「だったら! 逃げた犯人を捕まえればいいじゃないですか!」

「……それができたら苦労はしない。なぜなら人質が……」



「早くしねぇとこの座敷童、ぶっ殺すぞ!!」

人質は座敷童だった。



古来より現れる家に幸運を与える座敷童。
けれど、危害を加えてしまえば二度と現れなくなり
周囲一帯は一気に不幸のどん底へと落ちてしまう。

「ある意味、核爆弾より恐ろしいッスね、リーダー……」

「ああ、うかつに近寄ることはできない」

「でも、本当に座敷童なんているんッスか?」

部下は立てこもっている家を指さす。
こちらからは銃を構えた犯人が、見えないものに銃口を向けている。

おそらく、あの銃口の先に座敷童がいるのだろうが、見えない。

「犯人のはったりかもしれない。
 だが、ハッタリじゃない前提で行動しなければならない」

リーダーは逃走用の車を手配した。
そして、自ら発信機や通信機を取り外していく。

「リーダー! それじゃこの車を追えませんよ!?」

「バカ野郎! 相手はこっちの用意した車を警戒するに決まってる!
 もし発信機のひとつでも見つかったら座敷童はどうなる!」

「な、なるほど……」

いつもは大胆なリーダーなのに、今日に限っては慎重だ。
よほどのこの事件が繊細な対応を求められるかが部下にも伝わる。



「犯人! 車は用意したぞ!!」


「車だけじゃねぇ! 逃走用の金も用意しろ!!」

リーダーは部下に行って、銀行から金を用意させた。


「リーダー、いいんですか。こんなにあっさり渡してしまって」

「ああ。とんとん拍子にことが運べば相手も油断するだろう」



「逃走用のカーナビも用意しろ!」
「用意した」

「変装用のセットも用意しろ!」
「用意した」

「暇つぶしのゲームも……」
「用意した」

「えっ!? えーと……えーと……」


相手が考え始めた隙をついて、二人がこっそり家を取り囲む。
リーダーはさらに先導をきって突入の準備を整える。

「リーダー。なにもリーダーが最前線に立たなくても」

「相手は座敷童を人質にしている。
 どんな幸運で逃げおおせるかわからないからな」

リーダーの指示で全員が後方待機となる。
突入はできるだけ少人数で押さえて気配を気付かれない作戦だろう。



「えーーと……そうだ! 後は大型テレビを用意しろッ!」


犯人が次の要求を突き付けて、
相手の動きを注視している。そのスキをついてリーダーが突入した。

激しくもみ合う音と、わずかな発砲音が聞こえた後……。



「容疑者確保!!」


リーダーの高らかな声が聞こえ部隊は歓声を上げた。

部下が家に入ると、リーダーは座敷童を抱えたままの犯人を取り押さえている。

「リーダー! この先どうすればいいですか!?」

「座敷童を人のいない場所へ遠ざけるから車に乗り込む!
 いいか、絶対に近づくんじゃないぞ! 誰にも近寄らせるな!」

「らじゃ!」

リーダーは座敷童ごと犯人を車に入れる。


「では、これより犯人の輸送を行う。
 被害者を増やさないために追跡はしないように。絶対にだ」

リーダーは車を発進させた。





それからいくら待っても留置所にリーダーは来なかった。
そのかわりに、どこかの家が爆発的に富を手に入れたらしい。


「あんのリーダー! 最初から自分が座敷童を独り占めしたかっただけかぃ!!」