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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ポジティ部vsネガティ部

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ネガティ部とポジティ部は今日も争っていた。

「お前らみたいな根暗がモテるわけないだろ!
 どう考えてもポジティ部の方がモテるね!」

「これだから……モテる男というのは
 常にリスク計算を怠らないネガティ部の方なのさ」

「なんだと!!」
「なんだよ!!」

結局はどちらもモテない部活動の部員。
はた目には小さな小競り合いに見えても、
彼らにとっては部の存続をかけた戦争に等しかった。

「ようし、それじゃあ、どっちの部活動の方がモテるのか勝負だ」

ポジティ部の宣言によってバトルが始まった。
女性と過ごして、その満足点を集計し高い方の勝利とする。

「まあ見てな根暗ども」

ポジティ部のリーダーはこれまでの部活動で培った
持ち前のポジティブ精神で女性に声をかけていく。

「す、すげぇ……!」

これにはネガティ部も舌を巻く。


「やあ、こんにちは、素敵な服だね」
「君の髪はとてもつややかで美しい」
「楽しそうなおしゃべりが聞こえてきたからつい」

ポジティ部は失敗することなんて考えない。
思いついた褒め言葉をすぐに口にしてあっという間に人気を勝ち取った。

一方ネガティ部は、

「話しかけたら嫌われるんじゃないか……」
「そもそもいきなり声をかけられれば驚くし……」

と尻込みしていた。

「このぶんじゃポジティ部の圧勝だな。
 これでポジティ部の方がモテるとハッキリしたわけだ」

勝ち誇るポジティ部だったが数日もすると、
近づいてきた女性のほとんどが去って行ってしまった。

それもそのはず。

「上司に怒られてへこんでるの……」
「大丈夫大丈夫、なんとかなるって」

「なにその返事! もっと親身になってよ!」

「え、ええっ!?」

ポジティ部は悩まないため人の心がわからない。
前向きな言葉も時と場合によっては相手の心を傷つけてしまう。

「……わかるよ、その気持ち。
 辛いんだよね、でもどうしようもないって感じで……」

「そう! そうなのっ!」

「僕もよく失敗するかもって思ったから……」

ポジティ部が逃がしてしまった女性を、ネガティ部が受け止める。
マイナス思考を身につける活動をしていただけに、
相手と同じ目線にたって気遣うことができる。

「やっぱり、気持ちが共有できるネガティ部がいいわ!」

今度はネガティ部の方へ人が流れた。

「ふふふ……やっぱりモテるのはネガティ部の方なんだ……。
 頭がお花畑のポジティ部には負けない……」

自信を持ったネガティ部だったが、
女性が離れていくのも早かった。

「どうせ死ぬんだから……努力しても何も残らないよ……」
「なにやってもうまくいきっこない」
「なにもしないことが、一番成功することさ……」

「暗いわっ!!」

ネガティ部員の骨までしみ込んでいるマイナス思考は、
一緒にいる人間を暗くさせてしまった。
当然、一緒にいるデメリットを感づいた女性から離れていく。



勝負を決める当日。

ポジティ部にもネガティ部にも誰も女性は残らなかった。

「……」
「……」

「やっぱりポジティ部はモテないのか」
「ネガティ部じゃモテないのか……」

部員たちはお互いに顔を見合わせる。

「そうだ! この二つを合わせて、
 ちょうどいいバランスの部活を作ろう!!」

「それだ! それなら間違いなくモテる!!」

ネガティ部とポジティ部はついに手を取り合って、
部活の統合を決めた。

「"ティブ"のところは重複しているから部名から消そう」

「ネガティ部の"ネ"をとって、
 ポジティ部からも最初の1文字を取って……」



「「 できた! これでモテる!! 」」


    『 ネジ部 』


 ・
 ・
 ・

「ネジ部ってなにしてるの?」
「毎日ネジばかり研究しているみたいよ」
「なにそれーーこわっ」

創部から数日。
いまだにネジ部員が女性にモテていない。