ヒューマン・ワークス
初章 「ライオンのオス」
このエッセイの内容が最もわかりやすい話から書こうと思う。
ライオンのオスは、多くのメスを従えハーレムを築く。
そして、そのことに命を賭している。
これは、自分のDNAを出来るだけ多くの種類にして、存続する可能性を高めるためである。
いわゆる「種の保存」の本能である。
メスは、最強のオスのDNAを求める。
強ければ強いほど、自分の種も存続する可能性が高いからだ。
オスは群れのボスになると、まず前のボスの子供たちを皆殺しにする。
自分の種以外は、邪魔なのだ。
そしてメスはそれを止めない。
子供が死ぬと同時に発情し、新しいボスの種を欲する。
「最強」の種が欲しいからだ。
他の生物も全て、「種の保存」のために生きている。
生物が生きている理由は、やはり「種の保存」なのだ。
すべての生物がそうなのに、人間だけは違うのだろうか。
「人間には理性があるから」
よく聞く言葉だ。
男性が浮気をする理由は、実はそんな本能が原因だろう。
より多くの種類のDNAを残したい。つまり多くの女性と関係を持ちたい。
一夫多妻は実は生物の正しい姿なのかもしれない。
人間の女性は「最強」の意味が他の生物とは少し違うようだ。
それは人間の場合、力の強さだけが存続の可能性を高める訳ではないからだ。
「顔が良い」方が子孫を残せる可能性は高いだろう。
「頭が良い」方が存続していく術を多く持つだろう。
「金がある」方が存続するのに好条件だ。
いずれにしても女性は自分にとっての「最強」を求めるのだ。
TVのニュースで「親による虐待」が流れる。
約9割が、子供を持つ女性と結婚、もしくは同棲を始めた新しい男性、つまり継父によるものだ。
そして女性はそれを、強く止めない。
それどころか一緒になって虐待するケースが多い。
ライオンの話を振り返る。
人間とライオンでは違うのか。
「理性」なんて頼りないものだけで分けられているだけじゃないだろうか。
作品名:ヒューマン・ワークス 作家名:仙多毘一