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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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俺は絶対ミスしない

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「……というのを昨日のテレビでやってたんだけど」

「昨日じゃない」
「えっ」

「深夜の12時に放送していた番組だから、
 正確には昨日じゃなくて今日のテレビだ」

「……そ、そうだな」

「お前は今、間違った情報を俺に教えたわけだ。
 それもさも"正しい情報"であるかのように。
 これは詐欺だ! 誤認への誘導だ!!」

「ええっ!?」

「すぐに謝罪会見だ!!」

「ええええええええ!?」

男によって、主人公は謝罪会見へと立たされた。
議題は『テレビのウソ情報について』。

マイクを持たされた主人公は、
悪いとは思ってなくても反省したような顔で会見に立つ。

「えと……このたびは、昨日を今日として、
 誤った情報を流したことを謝罪いたします」

頭を下げると、一斉にフラッシュとシャッター音が響く。

「反省はしているんですか!」
「被害者へのお詫びの言葉は!?」
「今後どうなさるおつもりですか!」

「僕の謝った情報につきまして、大変反省していますし
 これにより被害にあった人には申し訳なく思っています。
 今後は誤った情報を流さないように気を付けて……」

会見の記者がさえぎってヤジを飛ばす。

「具体的な対策はどうするんだよ!」
「そうだそうだ! 人として恥ずかしくないのか!」
「すぐに責任取って、人間を辞めるべきだ!」

主人公はついにブチキレた。

「うっせぇよ!! たかが今日か昨日のちがいだろ!!
 なんでそこまで言われなくちゃいけないんだよ!!」

ふたたびシャッター音が鳴り響いた。
この失言によって、謝罪会見に対しての謝罪会見が
ふたたび男によって催された。



「えーー……このたびは、謝罪会見中に
 みなさまを大変不快な思いをさせてしまったことを謝罪します……」


なんとか謝り倒した主人公のもとに、
元凶となった男がやってきた。

「やあ、お疲れ。大変だったねぇ」

「もとはと言えばお前が……!!」

「おっと、逆恨みはやめてくれよ。
 ミスをしたのは君自身じゃないか、俺は悪くないよ」

「ムキーーッ!!」

主人公はいますぐこの男は張り倒したかったが、
そんなことをすれば再び謝罪会見をすることになる。

「でも、人間なんてミスする生き物だろう」

「簡単な話さ。ミスしなければいい。
 ミスをする生き物だと思っていることが間違っているんだよ」

男は完璧な人間だとでも言うように、得意げな顔で答える。


「まあ、君みたいにミスを重ねる人間は
 そうやって自分の失敗を本能のせいにするんだろう」

「……わかった。それじゃ僕はもうミスをしない」

その言葉を主人公から引き出せた男はにやりと心で笑った。

「それじゃあ、次に君がミスするときは相応のバツを受けてもらわないとね」

「ああ、もちろんだ。謝罪会見もこれまでで最大のものにするし、
 ちゃんと謝罪しているかのデータも取るようにする。
 しかも、関係者以外の人も呼べるようにして謝罪するよ」

「楽しみにしているよ。
 その謝罪会見はぜひ俺にセッティングさせてもらおうか」

そうすれば、主人公に批判的な人間を集められる。
3度目の謝罪会見で主人公をこき下ろせられれば痛快だ。

男はそんな計画を思い浮かべて、舌なめずりする。


男は主人公のもとから去ると、自分の家から財布を持ち出した。
買い物に使うでもなく向かった先は主人公の家。

こっそり侵入し、絶対に気付かれない場所に自分の財布をセッティング。


「ひひひ、これでよし。
 これで財布がなくなったと騒げばあいつの謝罪会見は確定だ」

すでに主人公の謝罪会見数は2回。
いままでミスしたことのない男が自演しただなんて思いもしない。

みんな、前科持ちの主人公が盗んだと思い込むに決まっている。









「あっれーー!? 俺の財布がないぞぉーーどこだぁーー?」

男はわざとらしく声をあげて探すふりをした。
場所はわかっているので、さっさと隠した場所にたどり着く。

「うわぁ! こんなところに俺の財布があるぞぉ!?
 しかも中身がなくなっている! これは泥棒だ――」

「いや、僕知らないって!」

「だったら、謝罪会見でちゃんと説明してもらわなくちゃな~~」

男が息巻くと、主人公はあきらめたように肩を落とす。


「……わかった。仕方ない、謝罪会見をしよう」

主人公は男に謝罪会見のための準備リストを渡した。



<謝罪会見までの準備>ーーー

会場:京東ドーム(1日貸切)…3000万円
人数:6000万人(食事・宿泊付)…4000万円
機材:最新ボイスレコーダー、最新ウソ発見器
   最新超音波測定器、中継用テレビカメラ …各1000万円

ーーーーーーーーーーーーーー

男の顔色がみるみる青白くなる。

「こっ、こんなの用意できるわけっ……」


「いいや、僕はこれ以上ないくらい反省しているんだ。
 最大規模の謝罪会見をするって約束だろう?」

主人公はにこりと笑った。