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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ぼくらはみんな優柔不断

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「いいや、それは間違っているね!
 そもそも女だから割引ってのは差別じゃないのか!」

「いいえ! まだこの社会では女性の地位は低いの!
 映画館くらい女性割引にするのは当然よ!」

「おかしい!」
「正しいわ!」

二人は睨み合っている。
このままでは血で血を洗う戦いになりそうなので、
二人は同じタイミングで同じ番号に電話をかけた。

「「 どっちが正しいの! ジャッジさん! 」」

ジャッジさんはマントをはためかせて飛んできた。

「わっはっは。私はジャッジさん。
 この世界のありとあらゆる森羅万象を公平な目で……」

「ジャッジさん聞いてくれよ!
 女性割引があって、男性割引がないなんておかしいだろ!」

「いいえ! おかしいのはまだ男中心のこの社会よ!」

二人はまくしたてるようにジャッジさんに事情を説明すると、
ふんふんと聞いていたジャッジさんはハッキリ告げた。

「女性割引があって、男性割引がないのはおかしい」

言い合っていた男が歓声をあげた。

「だけど、そんなことをグダグダ文句をつけるから
 いつまでも男社会から抜け切れていないんだ」

今度は女が歓声をあげた。
ジャッジさんのおかげで二人の議論に落としどころが見えて、
ケダモノのような目をしていた二人の顔が優しくなる。

「ジャッジさんの言うとおりだったよ。
 たしかに、女性割引もあっていいよな。苦労しているし」

「私も大人げなかったわ、ごめんなさい」


「うむ。これで問題解決だな。さらばっ!」

こうしてジャッジマンのおかげで今日も争いが公平平等にジャッジされた。
ありがとうジャッジさん。
本当にありがとう。






プルルルルっ!

ジャッジさんが飛び去ろうというタイミングで電話が鳴る。
それも同時に5つも6つもかかってきた。

「夫がペットを飼うのはダメだっていうの!」
「友達が約束をすっぽかしたんだ!」
「彼女ったら僕の話を聞いてくれないんだよ!」

ジャッジさんは必死に状況をメモしていく。

「「「 ジャッジさん! 早く公平なジャッジをしてくれよ! 」」」

ジャッジさんは連絡を受けた場所に出動し、
それぞれにジャッジをして折り合いをつけていく。

「ありがとうジャッジさん! 私も一方的だったわ!」
「ジャッジさんのおかげで、自分のミスに気付けたよ」
「たしかに僕の努力が足りなかったかも。ありがとうジャッジさん」

「いいえ、私はみんなに幸せになってほしいだけですから」

ジャッジさんはかっこいい決め台詞を吐いて。
夕日をバックに手を振る人々の上を颯爽と飛び去る。


そのタイミングで連絡が入った。


「このままじゃ戦争になる!
 どちらの法案がいいかジャッジしてくれ!」

「我が国のとるべき進路を公平にジャッジしてくれ!」

「国民に正しく知ってもらうにはどうすればいいかジャッジしてくれ!」


「えええええ!? 私には荷が重いですよ!」

名前を聞けば名だたる政治家がジャッジさんへ連絡を取っていた。

「君ならいつでも公平にジャッジしてくれるんだろ!?」
「ほかの政治家は打算があるから当てにならないんだ!」
「君のジャッジなら国民も納得してくれるんだ!」

「いや……だから……」


「「「 ジャッジしてくれ! さあ、早く! 」」」


追い込まれたジャッジさんは失踪した。
こうなると一気に影響が広がり始めて街は大混乱になった。

「ジャッジさん! 私はイチゴ味とマンゴー味。
 どちらを食べるべきがジャッジしてよぉ!」

「ジャッジさん! こういう時どちらが正しいんだよ!」

「ジャッジさん!」

いくら呼びかけてもジャッジさんはやってこない。
ジャッジさんが答えてくれるまでは、
いったいどの結論、どの決断が正しいのかみんな自信がない。

そんな人々も、ジャッジさん行方不明1週間後になって
やっとこさ一つの共通結論へとたどり着いた。


『ジャッジさんをもう一度召喚しよう』


かつてジャッジさんを作った魔方陣を再度生成し。
ふたたびジャッジさんを呼び出せばどこに隠れていようとも
この魔方陣へと強制的に移動させられる。

魔方陣はすぐに準備されると、
あっという間に儀式は始まった。


「ジャッジ~~ジャッジ~~ジャッジ~~……お越しくだされぇ」


魔方陣の中央から光の柱がいっぽん伸びたかと思えば、
その中からジャッジさんが強制的にやってきた。


「ジャッジさん! 私たちの悩みに
 正しいジャッジをお与えください!」

ジャッジさんは、100%完璧な答えを出した。



「お前ら、俺に頼りすぎ」



人々は少し考えると、自分たちの行いを猛烈に反省した。

「いつも公平なジャッジさんのジャッジで目が覚めました……」
「たしかに我々は自分で考えることを放棄していた……」
「なんでもジャッジさんの答えを待っていたものね」


「ジャッジさん、すまなかった。
 その公平で正しいジャッジを胸に今後は頑張ります!」

こうして世界はジャッジさんの使用頻度がぐっと落ちた。
そんな中、ジャッジさんは電話をかけた。


「人間へのジャッジ、終わりました。これでいいんですよね?」

『ご苦労。私のジャッジは正しかったかね?』


「ジャッジ神のジャッジに間違いはありません♪」

ジャッジさんは、次の依頼もとどこおりなく
ジャッジ神の出した答えをそのまま伝えてあげた。