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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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人類 vs アルツハイマー怪獣

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「アルツハイマー怪獣はなおも破壊を続けています!」

かつて、どっかの研究所で作られていた軍用怪獣は
アルツハイマーにより制御できなくなり破壊の限りを尽くす。

「そうだ! トラウルマンを呼んでくれ!」
「ダメです! 何度呼んでも"すぐ向かう"とばかりで……」
「ええい! 肝心な時に!」

怪獣に対抗できるトラウルマンが来ないとなれば、
もうこのアルツハイマー怪獣をなんとかするしかない。


「わが国の存亡にかかわることなので軍を出動させます」

首相の宣言により、ついに軍が出動した。
怪獣相手なので人間にはとても使えない非人道的悪魔兵器や、
さまざまな新兵器の機能テストもかねて。


「ファイヤーー!!」

それら新兵器が一斉に火を噴いた。


「……あれ?」

怪獣はわずかもひるむことなく破壊を続けていた。
命中しなかったのかと思ってもう一度。


「ファイヤーー!!」

やっぱり怪獣にはダメージがない。

「ファイ……」

「隊長、どう見ても効いてないですよ。
 そんな数秒前のことも覚えられないんですか。アルツハイマーですか」

「こいつにファイヤ」

小生意気な部下が粛清されただけで怪獣は止まらない。
今度は怪獣を育てていた飼育員たちが出てきた。

「倒せないなら思い出させればいい」

「そんなことできるのか?」

「これでもあの怪獣を育てたんですよ、我々は」

飼育員たちは怪獣の好きな食べ物や、
好きなおもちゃ、好きなものをとにかく並べた。


「さあ、思い出すんだ! 怪獣よ!」

「私たちはあなたの味方よ!」

「これだけ好きなものを与えれば、
 私たちが飼い主だと思い出してくれるはずよ!」


ガォォォ!!


アルツハイマー怪獣はそのまま破壊活動を続けた。
どうやら完全に忘れているようで効果はない。

物理的に排除もダメ、記憶取り戻させるのもダメ。
もう人類に打つ手はないように思われた。


「おい! なにしてる!!」


暴れまわるアルツハイマー怪獣の足元に、
白衣を着た男が走りこんで大きく手を広げた。

「怪獣よ! わたしだ! きみを作った研究者だ!」

男は試験管に入るころから怪獣を作り上げた研究者だった。
それを見た怪獣の動きが止まる。

「アルツハイマーで忘れた今、破壊活動しているのも
 きっと私に対する怒りによるものなんだろう!
 だったら、私を殺せばいい!」

グア……ウ。

「すまなかった。自分たちより大きな存在を作り出そうなんて、
 そんなふうに考えた私がバカだった」

ウ……ウウ……。

怪獣の様子を見た人たちは驚いた。

「おい! 怪獣が! 怪獣が海へ帰っていくぞ!」
「まさか……思い出したのか?」

その問いに、研究者は顔を横に振った。

「いいや、思い出したわけじゃない。
 ただ、心の底に眠っていた感情が行動させたんだ。
 "この人を傷つけたくない"という感情が……」

「それ自分で言う?」

研究者の自画自賛に驚きつつも、
怪獣は海の底へと還ってっくには再び平和になった。


「よかったよかった」
「アルツハイマーだとあそこまで手が付けられなくなるとは」
「こんなのは二度とごめんこうむりたいね」


安心していた人々に大きな揺れが襲った。
人々はみなその大きな体を見上げた。

「諸君! トラウルマン、今到着!
 さあ、悪い怪獣を倒して……倒して……」

トラウルマンはあたりを見回す。

「あれ? 私はなんでここにいるんだっけ?」

トラウルマンの様子に、人々は絶句した。
まさか……。


「こいつもアルツハイマー……?」




「お前たちが悪い怪獣だな! 小さき悪い怪獣たち!
 このトラウルマンがすべて排除してくれるっ!」

国は再び恐怖に叩き込まれる。