さあ!お金のために懺悔しよっ♪
気にくわない。
あいつと俺はいつも競っていた。
年収、経歴、人間関係……俺が買っていたはずなのに。
こうなれば、ライバルの秘密を暴くしかない。
「よお、最近やけに羽振りがいいって聞くぜ」
「ど、どこでそれを!?」
この動揺っぷり。
やっぱりなにかして金を稼いだに違いない。
「最近なにか副業でも始めたのか?」
「そ、そうじゃないよ」
ライバルはそそくさとその場を後にした。
俺はこっそりついていくと、自動販売機の前へ行きついた。
「*********」
聞き取れないけど、なにか自動販売機に話しかけている。
すると、なにも入れていない自動販売機から金が出てきた。
「す、すげぇ!? 秘密はこれか!」
ライバルがいなくなったのを確認してから自動販売機の前に。
『懺悔変換器』
懺悔……変換器?
マイクがついて、ここに懺悔をするのだろうか。
ライバルがさっきなにか話していたけど、
それはここで懺悔していたに違いない。
いったいなにを懺悔していたんだろう。
気になる……。
「まあ、俺も懺悔してみるか」
俺も同じように懺悔を金に変換してもらおう。
「懺悔します。昨日たばこを道に捨てました」
ガココンッ。
懺悔器からはお金ではなく、缶ジュースが出てきた。
「なんで俺だけ金じゃないんだよ!! 金出せよ!」
懺悔器を蹴ると、中から声が。
"懺悔の度合いにより報酬はことなります"
俺の懺悔レベルが低かったってことか……?
「懺悔します、実は浮気していました!」
「懺悔します、借金を妻に隠しています!」
「懺悔します、家にこっそりへそくりを……」
ウィーン。
「おお! ついに金が出てきた!!」
働きもせず、自分の秘密を暴露するだけで金が手に入る。
これほどいいことはない。
「待てよ、もっともっと大きな懺悔をすれば……。
俺はいったいなにが得られるんだろう」
プライベート島ももらえるんじゃないか!?
いや、もしかして顔がイケメンになるとか……
期待に胸がはりさけそうになる。
ライバルがなにを懺悔してたかも気になるが、
同じ方法であいつより金を手に入れれば俺の勝ちだ。
・
・
・
数日後、ふたたび懺悔器の前にやってきた。
この日までにどれだけの悪事をやってきたかわからない。
そのうえ、誰にもバレないよう秘密にするから大変だ。
さあ、俺に最高の報酬を与えてくれ。
「懺悔します、会社の金を着服して
知人の金を勝手に盗んで、悪い人に情報も売ってました!!」
これだけの悪事を懺悔すれば、
間違いなく報酬は過去最高のものになるはず。
懺悔器は動かない。
"最高の懺悔を確認しました"
きたあああ!! いったいどんな報酬が……!
一瞬、懺悔器のドアが開いたかと思うと
気が付いたときには真っ暗で狭い場所に閉じ込められた。
壁にはいくつかのボタンがついている。
「ここは……懺悔器の中か!?」
ってことは、みんなの懺悔聞き放題!?
しかも、中からは相手の顔が見れるので誰がなにを暴露したのか見放題。
「懺悔します、実は彼女の友達と付き合っています」
「懺悔します、人を殺してしまいました」
「懺悔します、こっそり放射線を漏らしてしまいました」
俺は懺悔の度合いに応じて、内側のボタンを押す。
簡単に現金は出さない。
最初は缶ジュースを与えて、もっと深い懺悔を聞き出すんだ。
「ふふふ、人の秘密を知るのがこんなに楽しいなんて!」
ここに懺悔した人間すべての弱みを自動的に握られるし、
みんな普通な顔していろいろ悪事しているんだな。
そこに、見覚えのある顔がやってきた。
「ライバル……。ふふ、いったいなにを懺悔してくれるんだ」
ライバルは俺の入っている懺悔器の前で足を止める。
「懺悔します。主人公との約束のためにお金を稼いだのに、
主人公にそのことを秘密にしていることを懺悔します」
約束って……10年前にいっしょに会社を作ろうっていう……。
もうずっと忘れたものだと思っていた。
それじゃライバルが金を集めていたのは。
「おい! 俺はここだ!! ここにいる!
忘れてなかったんだな! 一緒に約束をはたそう!!」
内側から必死に声をかけても外には聞こえない。
叩いても蹴っても効果はない。
「……これくらいの懺悔じゃ変換できないのか」
「待ってくれ!! ここにいる! 中にいる!!」
ライバルは行ってしまった。
俺も金を稼いだから金はあるんだ!
必死に内側を目で探すと、ボタンをみつけた。
"外に出るために"
「これだ!!」
俺は迷わずボタンを押した。
すると、無機質な音声が流れた。
"外に出るためには、
自分以上の懺悔をした人と入れ替わるしかありません"
懺悔器に閉じ込められた俺は、
いままでの自分の悪事すべてを懺悔したくなった。
作品名:さあ!お金のために懺悔しよっ♪ 作家名:かなりえずき